北海道根室市浜松

北海道根室市浜松
産業編集センター 出版部
2025/04/15 ~ 2025/05/15
北海道根室市浜松

【旅ブックスONLINE 写真紀行】
産業編集センター出版部が刊行する写真紀行各シリーズの取材で訪れた、全国津々浦々の風景を紹介しています。
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昆布干しの風景が壮観な海沿いの漁村集落

 根室半島の付け根から海に突き出している|落石《おちいし》岬。その岬の北側に数キロメートルにわたって続く弓なりの浜がある。浜松海岸と呼ばれている景勝地で、根室十景の一つに選ばれている。道道142号を車で北上すれば、右側の車窓から美しい海岸風景を眺めることができる。
 浜松は、この海岸沖を漁場とした昆布漁を中心に、古くから漁村として栄えた。静岡県の浜松からの入植者がいるわけではなく、集落の前が浜で後ろが松の木で覆われていたことから、この地名になった。
 浜松地区でつくられている昆布は|長昆布《ながこんぶ》 という種類。旨味が少ないので出汁をとるのには向いていないが、煮るとやわらかくなるので昆布巻きなどに使われている。長さは約15メートル。収穫された昆布は、小石を敷き詰めた干場で干す。かつては砂浜の上に干していたが、出荷する際に砂が付いていると値が下がるため、小石の上に干すことになったという。

 収穫は七月の半ばごろから始まり、天気の良い日であれば、道路沿いにつくられた干場に、昆布が敷き詰められている光景を目にすることができる。たくさんの昆布が、まるで川に揺れる染物のように広がる風景は、ここ浜松の夏の風物詩となっている。干場近くの小屋の中では、地元の漁師が干し上がった昆布を丁寧に束ねていた。
 浜松の集落は、海岸に沿うように家々が長く続いている。20数世帯で人口も100人未満、本当に小さな集落だ。点在する家々はどれも古く、屋根の錆色や朽ちた壁板が目立つ。そんな集落の中を歩き、鄙びた風景をしばらく目にしていると、なぜかなつかしい気持ちになってくる。かつて日本の海沿いの各地にあった小さな漁村の姿が重なってくる。
 集落の真ん中に、浜松八幡神社という神社があった。明治30年代に創建された神社で、昭和48年にこの地を襲った激しい暴風雨は集落に大きな被害をもたらしたのだが、奇跡的に住民に被害はなく、神社の御神体も壊れることはなかったという。その後、現在ある場所に移築され、今もなおこの地域の守り神として、浜松海岸を見守り続けている。

※『ふるさと再発見の旅 北海道』産業編集センター/編 より抜粋