牧野智晃 個展『まちをたぐる』

牧野智晃 個展『まちをたぐる』
牧野 智晃
2021/04/24 ~ 2021/05/29
KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHY

KANA KAWANISHI PHOTOGRAPHYは、2021年4月24日(土)より、牧野智晃個展『まちをたぐる』を開催いたします。

牧野智晃は1980年生まれ。第31回木村伊兵衛写真賞ノミネートとなった写真集『Tokyo Soap Opera』(2005年、FOIL刊)では、母子家庭環境で育つなかで培われた「母親世代が独自に醸成する特異な世界観」への好奇心から、中年女性を各々の生活空間内にて撮影し、ニューヨーク、台湾などの世界各都市でも同シリーズの撮影を展開してきました。

このたび初公開となる新作〈まちをたぐる〉は、東京23区内の電柱・電線が織りなす景観を撮りためたモノクロ写真で構成された新シリーズ。世界中の先進国のなかでも目を見張るほどの低い無電柱化率を誇る東京に、上を見やるだけでカオスな風景が広がっていることを牧野は示します。

その混沌とした様相は一見するとユーモアやおかしみに溢れていながら、のびのびと空中に生い茂る直線や曲線に覆われた都市風景は、社会情勢や悲哀をも滲ませます。味わい深い場面に社会学的な見地を内在させる牧野の一貫する眼差しの新境地に、是非ご期待いただけましたら幸いです。


 

「まちをたぐる」

GPSのログを記録しながら電柱電線のある風景を東京都23区を中心に撮影した。

東京の街を歩き上を見上げれば丸いバケツのような変圧器を抱え
高圧線、低圧電灯線、通信線が無数に交錯する
奇妙な形の哀しげな怪物がいる。
人々の暮らしには欠かせない電気は彼らを経由し人々に届く。

以前から電柱と電線が作り出す景観に興味があった。
どんなに美しい建物を建てたとしてもそれをぶち壊すように視界に入る電柱。
日本では電柱と電線の呪縛からは逃れられない。
街が発展していく過程で極めて非効率的で
不条理な存在であると思う。

2021年現在東京都23区の無電柱化率は8%ほど。
欧米はもちろん香港、台北、シンガポールなどの都市は無電柱化90%以上完了しており
イギリスは最初から電線を地中下していた。
8%という数字は圧倒的に遅れていると言える。
戦争で焼け野原になった街を再興する際、資金の都合で安価な架空線を選択しそのまま75年。
地中化計画第5期の1年間440キロのペースで作業すると日本全体の道路120万キロの電線を地中化するのに単純計算で2700年掛かるとある資料に書いてあった。

電柱、電線の景観が無くなるのが先か
産業遺産として景観保護されるのが先か
どちらも私が生きているうちに見届どけることができるだろうか。

この写真たちが今の時点での都市の記憶として機能してくれることを願う。

牧野智晃