石野祐美写真展「臍の緒」

石野祐美写真展「臍の緒」
石野 祐美
2021/11/30 ~ 2021/12/12
Jam Photo Gallery

私は母の事が嫌いだ。

 母はフィリピン人で首都のマニラで生まれた。何人かいる兄弟の長女で、勉強や家事のかたわら、下の子たちの面倒を見て、仕事の手伝いまでしていた。家族が多く生活が大変だった中、家計を支えるため日本に出稼ぎに来た。不法入国し、不法就労だったが、フィリピンパブで働きながら日本語を覚えたという。そして父と出会い、結婚。私が生まれた。
 昔は母の事が好きだった。私が幼い時もフィリピンパブで働いていたが、化粧をしてきれいな服を着た姿で仕事に行くのが自慢だった。
 私が成長期になり、胸が膨らみ始めると、母は異常に私の体を触るようになった。さらに言動までも不快感を覚えるようになった。それから私は母への態度を変えた。触られれば突き飛ばし、罵声をあびせた。だが、やめてくれることはなかった。嫌がる私に反して、母は徐々にヒステリックになり、怒鳴ることが多くなった。
母も私も異常なまでに執着し、関係も壊れていった。
 母は突然、家を不在にしていた時期が一年か二年ほどあった。家の中は母であふれていて、母がいない空間であるはずなのに、常にいるような感じがしていた。父と一緒に母の服やカバンをたくさん捨てた。まるで母が死んだかのように。それまでは母のいない空間を撮りためていた。母が帰国してからは、それはひどく怒られた。
 母の私物や家の中を撮影することが多く、なかなか本人を撮る気にはならなかったが、一年ほど前なんと
なくカメラを向けてみた。私と母の間に何かつながった気がした。それはきっと親子である「血」だろうか。私と母の今の関係は何かと聞かれれば、それは今もわからない。ただ、昔へその緒でつながった母子であることには間違いないのだ。

 


 

▼写真展概要
石野祐美写真展「臍の緒」
会  期:2021年11月30日(火)~ 12月12日(日)
     月曜休廊
開廊時間:12:00 ~ 19:00(日曜日は17:00まで)
入 場 料:無料
会  場:Jam Photo Gallery(www.jamphotogallery.com