濱浦しゅう「Curlew River」

濱浦しゅう「Curlew River」
濱浦 しゅう
2021/11/29 ~ 2021/12/05
Place M

『Curlew River』とは、英国の小説家であり詩人のWilliam Plomer(1903~73)が、日本の能楽作品「隅田川」をもとに台本制作をしたオペラのタイトルです。

 私はこの作品のなかで、「隅田川」という古典の要素とともに、“桜”という花の要素も散りばめました。古典は、日本人の表現の源を感じることができます。いっぽうの桜には、日本人の心をゆさぶる花として、時代に応じた象徴的意味を創り上げられてきた歴史があります。日本人は身近な自然を利用しながら、私景や情緒を時代に応じた景色に重ね、文化を生み出す力に長けているのではないでしょうか。私はこの作品を通して、私景と風景のつながりを、ゆっくり眺めたいと思い企てました。

 私がこの “桜” 周辺のスナップをまとめようとしたのは、桜の花の持つ古代からの象徴的意味や隠喩使いを通して、作品の広がりを感じて欲しかったからです。その桜の背景を感じながら古典を介すことで、いつの日かの人々の眼と、現在の私の眼、そして創造上の人々の眼を重ね、過去からつづく共通の視線や感性の断片のようなものを垣間見ることができないだろうかと考えました。 

 撮影者の視線や思考とは、その時代を象徴するところもありますが、撮影者の身体に感覚的に刻まれた遠い記憶の彼方からくる断片ではないでしょうか。私はおそらく、過去の人々から受け継いだ身体とその感覚との交通を試みているのだと思うのです。