タカザワケンジ展「someone’s watching me」

タカザワケンジ
2022/05/10 ~ 2022/05/28
IG Photo Gallery
IG Photo Galleryでは2022年5月10日(火)よりタカザワケンジ展「someone’s watching me」を開催いたします。
◇作家によるステートメント
「someone’s watching me」(1978年)というタイトルは、アメリカの映画監督ジョン・カーペンターの初期作品から採っています。『姿なき脅迫』という邦題で知られるこの作品は、独り暮らしの女性が何者かによって付け狙われるというサスペンスです。犯人は望遠レンズで彼女の私生活をのぞき見し、時に自身の存在を誇示することで彼女を恐怖に陥れます。女性はテレビ局に務め、本来なら世界を「見る/見せる」側に身を置いています。しかし、映像技術の発展を象徴する(そして「見たい」という欲望の象徴でもある)望遠レンズによって「見られる」恐怖を味わうのです。
写真はその性質上、人間を「見る側」と「見られる側」に分けてしまいます。路上で撮影された写真に自分が写ってしまうことに抵抗を感じるのも、一方的に「見られる側」にされてしまう怒りがあるからでしょう。
しかも、写真や映像が手軽にSNSでシェアされる現代において、「顔」が撮影されることに不安を覚える人が増えています。「顔」は個人情報であり、写真に写ったことで不利益をこうむるかも知れないからです。
では、路上の「顔」は、どこまで抽象化されれば個人情報から離れることができるのでしょうか。
「someone’s watching me」は路上で撮影した写真から道行く人の顔を切り出した作品です。具体的には、1/6~1/15ほどのスローシャッターで都市風景を撮影し、パソコンの液晶モニター上で道行く人の顔を拡大し、スマートフォンで撮影します。そして、Instagram(https://www.instagram.com/kenji_takazawa/)にアップロードした結果がこれらの画像データです。
どの写真も人間の顔であることは認識できますが、個人を特定するには至らないでしょう。SNSに投稿されたとしても肖像権を侵害することのない写真です。しかしカメラは現実を描写しているため、1枚1枚にはたしかに具体的に「顔」が写っています。彼らは実在するのです。
タカザワケンジは写真評論、写真家へのインタビューなどと平行して、自身も作品を発表してきました。その動機は写真にまつわる疑問について考えたいというものです。「someone’s watching me」は長い歴史を持つスト
リートスナップが、時代の変化とともに変わりつつあることを踏まえ、路上の「顔」の行方について考えようとした作品です。
なお、今回の作品は昨年12月にPhoto Gallery Flow Nagoya(名古屋)で開かれた同名展覧会の巡回となります。内容を一部差し替え・拡充して展示する予定です。ぜひ、ご高覧ください。
**安心してご覧いただくため、空気清浄機、手指の消毒薬の設置などの感染対策を行います。
タカザワケンジ展「someone’s watching me」
会期:2022年5月10日(火)~5月28日(土)
12:00~19:00
休廊:日曜日・祝日
会場:IG Photo Gallery
詳細情報につきましては、公式サイトの掲載ページをご覧ください。
■レクチャー
5月14日(土)18:00~
タカザワケンジ「写真史における『路上の顔』」
写真は路上を行き交う人々の「顔」をイメージとして残してきました。写真史上の「名作」と呼ばれる写真に見られる「顔」を振り返りつつ、他者の顔に興味を惹かれる私たちの心のうちを検討します。
You Tubeで配信ます。
チャンネル名: IG Photo Gallery