【 サガリバナ 】
　その昔22歳の若者が飛行機を２便乗り継いで、いくつかの島を巡り、３日に一本の貨物船に乗り、日本の最南端を目指して自分探しの旅に出た。そして若者は人生の迷子にもならず、無事に年齢を重ねた。
　それから数十年、すっかりオッサンになった私は人生の節目に再びその島を目指すことにした。今では日に三本の客船が島を繋いでいる。当時とは異なりずいぶんと行き易くなっている。その島へ行く前に、当時を振り返るようにいくつかの島を巡ることにした。
　途中の島で、朝早く散歩していると見たことない花が咲いていた。その花はまるで花火のようでもあり、美しさと儚さを内包しているように見えた。
　後で判った事だが、その花の名前はサガリバナと言うそうだ。
ＳＵＰ(Stand Up Paddleboard)でマングローブの川を上っていた時、その花が上流から流れてきた。ガイドの方が「これはサガリバナと言って、夜に咲き朝には散ってしまうのです。この花が咲いているときに見られると幸せになると言われています。」と説明してくれた。僕らは顔を見合わせた。
　この夏、38年振りに最南端のその島と再会を果たした。今ではずいぶんと観光客も訪れるようになった。22歳の自分が探していたものは何だったのか、今となっては思い出すこともできないが、長い年月を掛けて見つけた大切なものが何かは知っているつもりだ。
　ここに掲げた写真は作品のため撮ったものではなく、極めて個人的な旅の「記憶」写真だ。しかし自分にとっては大切な時間の写真なのだ。

■ 開催情報
佐藤圭司「サガリバナ」
会期：9月12日（月）〜9月25日（日）
会場：RED Photo Gallery（公式サイトの掲載ページはこちら）