石川幸史 個展「Afterwards」

石川幸史 個展「Afterwards」
石川 幸史
2022/10/28 ~ 2022/11/09
Alt_Medium

 この作品は、2008年と2018年に東ヨーロッパ一帯(旧ソ連のウクライナやバルト三国、旧共産圏のポーランド、ハンガリー、スロバキア、ルーマニア、チェコ、ブルガリア、アルバニア、旧ユーゴスラビアのボスニア、クロアチアなど)を旅し撮影したスナップ写真を、ロシアによるウクライナ侵攻後の2022年の現在において改めて見直す中で、新たに見いだされてきた断片的なイメージを編集し制作しています。

 1978年生まれの私にとって、幼い頃、繰り返し目にしたチョルノービリ原発事故、ベルリンの壁崩壊、ソ連の崩壊及び東欧の民主化、続いて起こったユーゴスラビア解体やボスニア紛争などの歴史的な事件の映像は、遥か遠く国の出来事でありながらリアルタイムにカタストロフと変革が同時進行していく事態として、またとりわけチョルノービリ事故やチャウセスク大統領殺害の映像などは恐ろしいディストピア的な映像としても記憶の縁にこびりついてきました。

2008年と2018年の撮影当時も、そうしたイメージをどこかにひきずりながら、歴史や暴力の痕跡を求めて都市や路上を歩き、その中を生きる人々や遭遇した光景を撮影していたことを思い出します。
「過去は、それが認識可能となる刹那に一瞬ひらめきもう二度と立ち現れはしない、そうしたイメージとしてしか確保することができない。」「過ぎ去った事柄を歴史的なものとして明確に言表するとは、それを〈実際にあった通りに〉認識することではなく、危機の瞬間にひらめくような想起を捉えることを謂う。」というヴァルター・ベンヤミンの言葉に倣い、私的な記憶が歴史の記憶とせめぎあい出会う場所として、土地を歩き、そこで遭遇したものや人、出来事の中に、歴史的な時間の残骸や瞬間の閃くようなイメージを見つけ出すことは、もはや取り返しのつかない過去が、直に私たちを見つめ返しているような奇妙な感覚について想像することにもなるのではないかと考えています。

また、この作品はイメージにおいて回帰するもの、あるいは写真の持つ奇妙な亡霊性についての作品でもあります。

 


 
石川幸史 個展「Afterwards」
会期:2022年10月28日(金)~11月9日(水)
   12:00~20:00(最終日 17:00まで)
会場:Alt_Medium
   木曜日休廊
詳細は、公式サイトの掲載ページをご覧ください。