松元康明 個展「piles」

松元康明 個展「piles」
松元 康明
2023/05/16 ~ 2023/05/28
Roonee247 Fine Arts

森の奥の、奥深く。
人や文明の気配が遠く消えた世界は、果てしない時間と成長の積み重ねを軸にして自転を始め、不均衡が集まりひとつのハーモニーを奏で出す。

コロナ禍で外界との接触が断絶され、インスピレーションを求めて訪れた誰もいない森。
森はまるでひとつの大きな生命体の様に、雄大な呼吸の中に僕を抱いた。
そのスケールの壮大さに目眩を覚え、安らぎと畏れという相反するふたつの感情が同時に僕を占拠した。

全ての調和が取れたその空間は、同時に、至る所に空間のギャップや歪みがある様にも感じられた。
その複雑な空気感は、森が経験してきた果てしない時間の積み重ねと、そこに息づく無数の生命がそれぞれの速度で成長してきた事で培われた不均衡さによってこそ創り出されたものではないか。と、僕は思う。

不均衡さがリズムを刻み、空間全体が自転を始める。
そしてその中に身を置いた、森から見ればちっぽけな異物の僕。
一種のパニック状態に陥った僕の感覚は異常に研ぎ澄まされ、あちこちに森の斑を感じ始めた。

誰もいない森で僕が体験したこの不思議な感覚を再現すべく始めたシリーズが “piles” です。

可能な限りその場の生の空気感を捉えるため、塗布した薬品が湿っている間に撮影から現像までを行う湿板写真で撮影し、湿ったコロジオンの膜にその場の空気を取り込ませました。
その後、暗室で銀塩写真に焼き付けられた森のイメージは、一旦分解され、撮影地で採取した土や枝葉の煮汁でランダムに煮込むことで、森のエッセンスを不均衡に再注入しました。
そうして出来上がった森のピース達を再構築することで、作品は創られています。

こういったプロセスを積み重ねることで、気の遠くなるような時間の積み重ね(piles)によって作られた、森の荘厳な空間、そしてその中に身を置く自分を表現しました。
更に、本展で初披露となる110x140cmの大伸ばし作品では、森の中での感覚をより ”体感” して頂けるのではないかと思っています。

分解と再構築を積み重ねて創られた、イメージの森へようこそ。

 


 

松元康明 個展「piles」
会期:2023年5月16日(火)〜 5月28日(日)
   12:00-19:00(最終日16:00まで)
会場:Roonee247 Fine Arts Room 1+2
詳細は、公式サイトの掲載ページをご覧ください。