本展は、作家と鑑賞者の写真によって構成される。各々が持ち寄った写真を自由に配置し、それらに自らの手で何かしらの手法を意図的に施していく。

写真は単なる物質や画像データでしかない。しかし、同時に、アルバムの中から適当に選んだ一枚を簡単に捨てることができないように、可視できない何かが宿っている。私はこれを、「写真の呪術性」と呼んでいる。この展示では、可視できない何かを人の手を加えることによって明らかにし、形而上学的性質と形而下学的性質を併せ持つ写真をあらゆる側面から観察、考察してみたいという狙いをもとに始めたシリーズである。

持ち寄った写真と当人との関係性についての双方的な対話を行い、ストーリーの奥底に潜在している「写真とは何か」に対する解をより多く炙り出してみたい。客観的な言葉ではなく、個人的なエピソードを用いて語られたポストトゥルース的な写真の解を、我々はどのように感じ、思考しているだろう。また、日々拡張していく展示空間ではどのようなドラマやケミストリーが生まれるのだろうか。写真と自分、自分の写真と他者の写真、写真と写真以外の物質など、異なる物質同士が響き合う空間になることを願っている。

 
五味田 琳子「写真について」
会期：2023年5月30日（火）〜6月4日（日）
　　　12:00 – 19:00
会場：TOTEM POLE PHOTO GALLERY

詳細は、公式サイトの掲載ページをご覧ください。