新納翔 写真展 ヘリサイド

新納翔 写真展 ヘリサイド
新納 翔
2019/09/10 ~ 2019/09/28
コミュニケーションギャラリー ふげん社

新納翔は1982年生まれの写真家で、消えゆく都市風景の記録をテーマに、東京を拠点に活動しています。本展では、国道1号線と15号線沿いを撮影した初期作品「道脈」シリーズの延長と位置付けられる新作「ヘリサイド」から約20点を展示いたします。

新納は、7年間山谷の簡易宿泊所の帳場で働きながらドヤ街を取材した『Another Side』(2012)や、その後2014年から2年間築地市場の警備員として働きながら取材した『築地0景』(2016)など、その場所のコミュニティに入り込むという独自のスタイルで取材をすることで知られています。これらの都市写真を街の表層を剥いで核を表出させるというコンセプトで集成した写真集『PEELING CITY』(2017)を2年前に上梓しました。

これらのシリーズと並行して、2006年に端を発する新納のライフワークともいうべきシリーズ「道脈」があります。新納が生まれ育った都市である横浜から、品川まで、国道1号線(第二京浜)と国道15号線(第一京浜)沿いに、都市の縁(ヘリ)部分といえる臨海部を撮影したシリーズであり、2006年から現在まで継続しています。本展で初めて発表される「ヘリサイド」は、「道脈」シリーズの延長にあると言えるでしょう。

本シリーズを始めるきっかけとして、レンズスイング式パノラマカメラ「WIDELUX」との出会いが大きいと作家は言います。湾岸産業道路、大井埠頭、羽田空港などがある京浜工業地帯=「ヘリ」は、都心部の時間軸から切り離されたかのように独特の空気が漂っています。「WIDELUX」での撮影時に生じる画面全体の歪みが、異界の印象を一層際立たせています。2020年に迎える東京五輪に向けて都市部の開発が進む一方、「ヘリサイド」は聖域のように、過去でも未来でもない風景として、そこに存在しています。新納は、都心の時間軸から切り離され、こぼれおちた景色こそが東京を象徴しているのではないか、と問題を提起しています。

長年東京を撮影してきた作家による撮り下ろしの東京風景を、この機会にご高覧ください。

■作家ステートメント
戦後復興期にとてつもない速さで東京という街が形成された時以来、また東京は目まぐるしく変化している。 かつて築き上げられたものが寿命を迎え、 令和の今、ビルドアンドスクラップの嵐に包まれている。

その破壊と再生のエネルギーは中心部からヘリである湾岸部にて向かって徐々に減衰していく。 湾岸産業道路、大井埠頭、羽田空港などがある京浜工業地帯沿いに連なるヘリの景色は、 かすかに残る平成東京の残像である。このエリアがどこか異様な雰囲気に包まれているのは時代の軸から切り離され、 異次元の世界に漂っているからだ。

ヘリの景色は、 これから迎える未来の東京と過去との境界線でもある。ここに来ると、 現在でも過去でも未来でもない時間に行くことができる。 都心にいて感じる曖昧さの核がヘリにある。

都心から円状に広がったエネルギーとヘリがぶつかり合う場所はパノラマが合う。 どこか、世間の狭間に落ちた自分はヘリにシンパシーを感じるのだ。

新納 翔

■関連イベント
ギャラリートーク:鳥原学(写真評論家)×新納翔

写真評論家の鳥原学さんをお招きして、ギャラリートークを開催いたします。
鳥原さんは、「日本カメラ」誌上で2017 年写真集ベスト5に新納翔写真集『PEELING CITY』(2017,ふげん社)を選出してくださいました。実は国道1 号線沿いに住んでいたこともあるという鳥原さんが、新作「ヘリサイド」をどう読み解かれるのか、どうぞご期待ください。
トークの後はささやかなパーティを開催します。

日程:9 月14 日(土)
トーク 17:30 ~ 19:00
終演後パーティ 19:00 ~ 21:00
参加費:1,500 円
※ご予約は電話とメールで承っております。
TEL:03-6264-3665
Mail:event@fugensha.jp

 

ゲストプロフィール:
鳥原学(TORIHARA Manabu)
写真評論家
テーマは日本におけるさまざまな写真環境の変遷を通して、社会の変化をさぐること。評論の執筆や雑誌への寄稿のほか、写真教育や展示の企画にも携わる。

1965年 大阪市生まれ
1988年 近畿大学商経学卒業
1991年 一般企業を経て株式会社写真弘社と契約。ギャラリーの開設と運営の任にあたる
2000年 フリーとなり、執筆など評論活動を始める
2001年 ワークショップ「imageBOX 東中野」に参画、プレゼンテーションゼミなど担当
2006年 日本写真芸術専門学校非常勤講師に
2016年 大邱フォトビエンナーレ(韓国)にキュレーターとして参加
2017年 同校主任教師
2019年 東京造形大学非常勤講師(担当:写真史)

主な著書に、『時代を写した写真家100人の肖像(上・下)』(玄光社 2018年)、『写真のなかの「わたし」ポートレイトの歴史を読む』(ちくまプリマ―新書 2016年)、『日本写真史(上・下)』(中公新書 2012年)など。
2017年日本写真協会賞学芸賞受賞。