写真展

Long Hug Town #5

水島 貴大

2018.12.11(tue) ~ 12.23(sun)

今年も花火大会の日がやってきた。毎年8月15日の終戦記念日に開催される花火大会は、この街の人々にとって年に一度の一大イベントだ。
昼過ぎには交通規制がされ、街の警察官や自治体はほとんど駆り出される。多摩川の土手にあがる花火を一目見ようとたくさんの人々が訪れるからだ。

18時から開催されるイベントだが、14時頃には客席となる土手はまんべんなくブルーシートに覆われる。去年の悪天候中止を受けてか、今年は例年より大盛況のようだ。コンビニやスーパーの惣菜や弁当は隣の駅まで完売になる、土手に座って見ることのできる花火なので、お花見さながらの売れ行きを見せる。
私は間に合わせで食べれるお菓子や飲み物を買って、あとはカメラをぶら下げて界隈を歩く。去年の中止のときは、河川敷に暮らしてるおじさん達と雨の中おでんを食べて終わったなあ、とか思いながら、今年の快晴の空を見上げる。

夕方になるとぞくぞくと訪れる人々、駅からも橋からも途切れることなく人々が押し寄せる。しだいに暮れていく陽の光の中に流れゆく人々をじっと見つめる。

浴衣姿のカップルや、小さなラッパを吹いている女の子、おじさん、おばさん、不良も真面目も、あ、去年の河川敷のおじさん、あと、前に写真撮らせてもらった人たちもたくさんいる。みんなみんなここにいる。

19時30分、いよいよ花火が打ち上げられるとき。街のすべての人々から大きなカウントダウンがはじまる。
5、4、3、2、1、、、、、、、、、、
小さな爆発音とともに一筋の花火が打ち上がる。
人々がじっと待つその静けさの中を、花火はゆっくりと、か細くもくっきりとした線を描きながら空に昇っていく。
その瞬間を、きっとみんな尊いと思ったに違いない。
まるで幻想的な夜劇の開幕を待っているような感覚の直後に、大きな花火が目の前の空にいっせいに広がっていった。


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みんなの思い出は空でひとつに結びついて、花火よりも色鮮やかにこの街を包みこんでいくように思えた。
かすかに遠くで小さな女の子が叫んでいるのが聞こえた。
「せんそうはんたい!」「せんそうはんたい!」
振り返ると、泣いている人がいた。
祈りを捧げる人もいた。
酔っ払って寝てる人がいた。
インスタしてる人がいた。
走り回る子供や子犬たちがいた。
愛する人を抱きしめている人がたくさんいた。
人々は色鮮やかな光をまとい、なぜか、それを放出しているように見えた。
みんなみんなここにいて、光はその事実だけを照らし続けている。
振り返った私を振動がおいかけて、そっとその背中を前に向けて押した。


「Long Hug Town」街とそこに生きる人々を写したシリーズ。

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