現像(キオ・グリフィス+細淵太麻紀)「photopia/scotopia-東京」現像 Vol.4

レポート / 2018年12月7日

~多様な視覚を集めることで、〈東京〉の今の姿を浮き彫りに~

会場にて編集作業中の細淵さん。『できる限り在廊し、日々新しい東京の写真を展示に追加したり組み替えたりしています。日々変化する今の東京の姿を如実に表しているようで、最終日にはどのような形になっているのか楽しみです」。細淵さんは、横浜のBankARTの立ち上げに携わり、これまで多くのアーティストと人をつなぐ活動に注力しつつ、自身の表現として写真作品を発表してきたそう。多様な見方や考え方をする人々が合意形成を図る過程に触れたことで、多くの人々の考え方やものの見方を集めるプロジェクトをしたいと考えるようになったと、話してくれました。

この展示は、「東京」をテーマにさまざまな人が撮った写真を集め、インスタレーション空間で展示することで今の東京の姿をあぶり出すという写真プロジェクトです。

今、東京の街は2020を合い言葉に様々な変化が起こっています。古い建物は取り壊され、新しいものが建つ。そうした時代の変化を何かの形で表せないかと考えたのが、写真と文章による冊子PJ「現像」主宰のアーティスト、キオ・グリフィスさんと細淵太麻紀さんです。在廊されていた細淵さんにお話を伺いました。

暗室をイメージした展示スペース。
プリント作品を並べ、乾燥させているかのように吊るして展示しています。 「今はスマホで撮ってSNSで共有して終わり、プリントをしない人が多くなりました。でも、ある程度の大きさの紙にプリントすることで、見えなかったものが見えてきます。時には、自分が意識していなかったものまで映し出されることも。多くの人が参加されることで、多くの新鮮な驚きに出会えるとワクワクしています」。

「インスタレーションにより、空間そのものを都市に見せています」と、細淵さん。
電線や架線、工事のイメージ、あるいは物干しロープなどを表現した針金やロープが張り巡らされ、空間を埋める東京の写真がビルや施設の乱立する様にも見えてきます。

「経済の論理に巻き込まれ変貌する都市や街の意思はどこにあるか、これはどの都市もが抱えている問題です。今回の展示では、東京都の施設ということもありテーマを〈東京〉にしました。誰かの固有のイメージを集めて串刺しにすることで、東京を浮き彫りにしようとしています。東京という街はみんなが自由に意見を言える対象です。人によって距離感はさまざまで、主体的にも客観的にも関わることができます。この展示が、東京という街や都市について考えるきっかけになれば幸いです」

既存の区分けではなく写真から出て来たキーワードをもとに、もう一つの都市のイメージマッピングをしているゾーンです。「開発区」「育成区」「温故区」など、東京という街を表した世界観に納得させられます。

集まった写真は、細淵さんとキオさんの手で公開編集(会場内に展示)され、展示後に「現像」vol.4として発行されるとのこと。展示開始までに1,000枚以上が集まり、展示期間中の現在も続々と〈東京〉の写真が寄せられているそうです。
写真家の作品もあれば普通の人がスマートフォンで撮影したものもあり、撮影年代も様々。それが今の時代を表していると、細淵さん。プロジェクトを通して一人ひとりが主体的に〈東京〉について考えることで、良い街になっていくのではないかと話してくれました。

細淵さんとキオさんによる写真冊子「現像」の創刊号(左)と第2号。第3号は編集中で、第4号は今回集まった写真をもとに展示後に作られる予定だそうです。
「像を浮かび上がらせるまでの行為を広義に〈現像〉と呼んでいます。これまでに再開発や街などをテーマにしてきました」と細淵さん。

ぜひ皆さんも、会場へ足を運ぶと同時に、東京の写真を投稿してみてはいかがでしょうか。自分が見えていなかった〈東京〉の姿に気付き、都市の声が聞こえるかもしれません。

壁に直接描かれた東京の地図とポスター。

「ここに集まっている東京の写真は、50年もすると痕跡が残っていないかもしれないようなかけがえのないもの。そうした危うさの上で都市や私たちの日々が成り立っているのだと感じます」と細淵さん。

投稿方法はこちらのサイトからご確認ください
https://genzouprojects.wordpress.com/

【現像(キオ・グリフィス+細淵太麻紀)「photopia/scotopia-東京」現像 Vol.4】
会期:2018年11月24日(土)〜12月24日(月・祝)
11:00~19:00(入館は閉館30分前まで)
会場:トーキョーアーツアンドスペース本郷(月曜休館)
http://www.tokyoartsandspace.jp/archi…/2018/…/OS18-E02.shtml