籔田 千晴 写真展「dots」

レポート / 2020年12月24日

~写真が紡ぐ「日常」に潜む物語~

会場にて、籔田さん。会期中全日在廊予定とのことですので、ぜひ会場へ足をお運びください♪

籔田 千晴さん 写真展「dots」が、12月26日(土)まで六本木駅より徒歩5分ほどのところにあるSTRIPED HOUSE GALLERYで開催されています。代官山 蔦屋書店でデザインコンシェルジュを務める傍ら、グラフィックデザイナーとしても活躍されている籔田さん。

2011年から本格的に写真をはじめ、翌年2012年には同会場にて初個展を開催されました。同展では、1年間毎日1枚撮りためた365点の作品全点を展示。その後も同会場で個展を重ね、今回で6回目の開催となります。本展に込められた籔田さんの想いについて、お話を伺いました。

本展は3階のギャラリースペースで開催中。「3階での展示も年末開催も初挑戦!ギャラリーのオーナーさんから『同じ写真でも展示場所や時期で見え方がだいぶ変わるから、様々なパターンで展示してみるといいよ』とアドバイスをいただきました」と、籔田さん。

なんの変哲もない「日常」でも、
写真で切り取ると「特別」な瞬間が見えてくる

写真を本格的に撮りはじめたのは、約9年前の東日本大震災の直後からだと籔田さんは語ります。

「当時、グラフィックデザイナーの仕事が激減し途方に暮れていたとき、追い打ちをかけるように東日本大震災が起こりました。そんな状況下で今後について思い悩む中、心のよりどころを求めて取り組みはじめたのが、毎日1枚写真を撮るということ。まずは身近なところに目を向けてみようと思い、日々の生活の中で心惹かれた瞬間を撮影し続け、その作品は毎日SNSに投稿していました。すると、なんの変哲もない「日常」の中には「特別」な瞬間がたくさん詰まっていたのだということに気付かされたのです。俳句好きな知人は、『俳句の醍醐味はありきたりな日常を言葉で切り取ることで、その日々がより豊かに感じられるということ』と言いますが、わたしも同様の想いを抱きながら写真と向き合っているのだと思います」

籔田さんはSNSで写真を投稿する際「分かりやすさ」を重視しているのだそう。「面白いと思って撮影した光景が必ずしも自身の思惑通りに伝わるわけではありません。同じ被写体でも、肉眼、プリントした写真、スマホの画面、それぞれに見え方は異なるからです。なので難しく考え過ぎず、出来るだけストレートな撮影を心がけています」と、籔田さん。

写真が切り取る「2つの瞬間」が紡ぐ物語

本展の作品を眺めていると、2作品1セットで額装されている作品の数々が目に留まります。その意図について籔田さんにお聞きしました。

「ある時2つの作品を並べてみたところ、それぞれの作品がもつ物語とは別の新たな物語が生まれるということに気付きました。そこで、9年前に撮影したものから最近のものまで含め、画的な共通点や物語性という観点でパズルのように作品を組み合わせてみたら面白い発見が多く得られたんです。その作業はまるで、文字のない絵本を制作するようでもありました」

本展タイトル『dots』は、写真によって切り取った2つの瞬間を並べることで見出される物語を示唆しているのだそうです。どこかユーモラスな作品『ナイスショット!』も2つの作品が並ぶことで、より鑑賞者の想像力を刺激します!

1枚の写真からはじまる物語

物語という観点では、1枚の作品がきっかけで鑑賞者と作品との間にも、偶然生まれた物語があったと籔田さんは語ります。

「こちらの作品は、代官山 蔦屋書店近くの商業施設「ヒルサイドテラス」にマーケットが出展していたとき、メキシコのアイス屋さんで店員のおじさんにアイスをかざして撮影しました。その後、本作を個展で展示したところ、たまたま見に来てくれたメキシコ大使館職員の女性とその弟さんがとても気に入ってくれて、お2人とも購入してくれたんです。そのとき、その女性が「大使館暮らしで様々な国を転々としているので弟と離れて久しいのですが、365点も作品がある中で同じ作品に惹かれたところがやっぱり兄弟なんだなと思って嬉しかった」と話してくれました。この一件により、日本から遠く離れたところに位置するメキシコという国が急に身近に感じられたのです。その後、メキシコについて調べているうちにすっかり魅了され、代官山 蔦屋書店でメキシコフェアまで手掛けました!とても思い出深い作品です」

最後に本展に込められた想いについても、籔田さんにお伺いしました。

「長い人生の中には楽しい瞬間ばかりではなく、辛く苦しい瞬間も必ずあります。その渦中にいるときは辛い気持ちが先だってしまい、なかなか気づくことが出来ないものですが、人生を重ねる中で過去のマイナスな思い出がいつかプラスに転じる瞬間があるということを知りました。それは辛い経験も含め、その瞬間の連続が今の自分を作っているということに他なりません。つまり、瞬間と瞬間を繋げて1つの作品にすることで新しい物語を生み出すという本展の挑戦は、日常生活の日々に通じることでもあったのですね。そんな気付きを今後の作品でも表現していけたらと思います」

■STRIPED HOUSE GALLERYのオンラインサイトでは、会期中のみ本展の作品や写真集の販売を行っています。詳細はこちらをご覧ください。

会場では、本展の写真集『dots vol.1』やクリスマスカード(5枚セット)、展示作品などがお買い求めいただけます。展示と併せてぜひご覧ください!

プロフィール

【籔田 千晴 写真展「dots」】
会場:STRIPED HOUSE GALLERY
会期:2020年12月16日(水) 〜 2020年12月26日(土)
11:00~19:00(最終日は17時30分まで)
http://striped-house.com/now1.html

籔田さん Facebook
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