以前取材させていただいた写真展でも、東京で人口増加が著しい国としてベトナムとネパールが取り上げられていました。「NEIGHBORS.」は外国人技能実習制度などで来日したベトナムの方たちを取材撮影された作品。ニュースで目にする機会が増えてきていますが、思っていた以上に身近なことと感じました。3月に日本写真芸術専門学校を卒業されたばかりの鈴木さんにお話を伺いました。
ーこのテーマを撮られるようになったきっかけなど教えてください。
きっかけは父の工場でベトナムの方が働いていて、僕もアルバイトしていて一緒に働いていました。そこで今まで知らなかった父の姿を知ったり、街を歩いている人の中にもベトナムの人が増えたなと気にするようになったり、今まで見えていなかった街の姿が垣間見えてきて、(撮って)残してみたいと思うようになりました。
ニュースでは実習生の失踪や暴力、いじめなど強いワードがでてきますが、最初は日本語が理解できなかったというところからスタートしていると思います。
地元静岡で撮影していて、日本語がまだ理解できないからと、一緒に働いている人が地元の日本語学校を紹介したり、その繋がりからお花見や夏祭りなど日本の文化を体験しながら日本のルールや言語を学んでいる姿を見てきました。スタートラインは大差ない筈なのに、周りの人たちとの出会いや関わりあいによって結果に違いがでてしまったのかな、と感じます。雇う側でもどう向き合っていくかを念頭におくことで、社会問題の解決に結果的につながっていくのではという思いです。
ーメイン写真の大きなプリントやライト、空間を使っての面白い展示ですね。
インパクトが足りないといった意見をもらったりして、等身大にプリントしてみるとどうだろうと、壁面を大きく使って展示してみました。
コンセプトは人を見つめる、人と向き合うという部分になります。自分自身昔からコミュニケーションがあまり得意ではなく、自分が写真を撮ることを通じて感じてきた人と向き合う難しさ、というものも含めてイメージしながら展示構成を考えました。
(↓下記作品)クロスにプリントしたものは、夜の工場をフェンス越しに撮ったもの。手前の人物写真は人と向き合う際に感じる壁のようなものをOHPフィルムとパラフィンで表現したものです。
ー長くかかる問題だと思いますが、これからも長く撮っていきたいと思われたりしていますか。
瀬戸正人さんの『部屋』のような、日本と海外の文化の混ざり合ったようなものを撮ってみたいですね。今起こっている現実が、10年、20年後に改めて見た時に何か新しい発見が見えてくるものを撮り続けていきたいですし、1年生のときには向き合いきれなかった地元の変化も追っていきたいです。
ーまだまだコロナ渦で見に来られない方が多い状況ですが、メッセージをお願いします。
もう帰国してしまったり東京に来られない人に、写真展を見てもらいたいと思っていて、配信ライブで情報を発信する予定です。またZOOMインタビューをまとめてZINの様な形で配布できればと思っています。
撮っているのはベトナムだけれど日本人同士の中でも生じる問題だと思います。まわりの悩んでいる人たちにも僕自身も眼差しを向け、人と向き合っていければと思います。
鑑賞者が作品と向き合うというだけではなく、撮られた鈴木さんと写真を通して会話をしていると感じる写真展です。理解しあうということは知ることから。決して自分と遠いことではない、写真の向こうの現実を考えさせられます。インスタレーション的な展示とあわせ、ぜひご覧ください。
【鈴木 竣也 写真展「NEIGHBORS.」】
会場:ギャラリーヨクト
会期:2021年3月11日(木)~18日(木)
13:00~19:00(最終日17:00まで)
http://blog.livedoor.jp/galleryyocto/archives/28050941.html