なかしまさや 写真展「Mirror, mirror」

レポート / 2021年3月27日

会場にて、なかしまさん。

これは、自分を使ったわたしの実験です。
どれだけ他の人の痛みや苦しみを、自分が受け止め、理解することができるかを、表現することを通して知りたいのです。
なぜなら、相手のことを、どれだけ慮れるか、想像できるか、
それがこれからの世界に必要だと思うからです。
 - なかしまさや -

心理学を学んだバックグラウンドをいかし、現代にいきる私たちの声にならない声をひろいあげ、耳を傾けることをテーマとした、なかしまさやの初個展となります。私は、深層心理学や集合的無意識に強い関心があり、スイスにてユング派心理学を学びました。そこから、他者とつながる鍵は集合的無意識にあるのではないかと考えるようになりました。
本展では、自己愛性人格障害の母親との葛藤を娘の視点から表現しています。ただ、これは、個人的なストーリーではなく、そのような葛藤を理解したいという私の願いに基づいたものです。そのために、深層意識や集合的無意識が結晶化したおとぎ話からの象徴をもちいて作品を制作することで、深層心理に共鳴させることに取り組んでいます。今回は、白雪姫の継母と自己愛性人格障害をもつ母親を照らし合わせ、そのような母親から逃れようとする娘の内面的な葛藤を表現しています。
コロナ禍で分断された社会において、深層意識や集合的無意識を通じ、世の中とコミュニケーションをとることも、調和や平和につながるのではないか、と考えているため、本シリーズは続けていく所存です。今回はその初の試みとなります。ご高覧いただけますと幸いでございます。

Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery(KKAG)は、多くのギャラリーがある東京・馬喰町でも異色の、会計事務所が併設されているギャラリー。こちらで現在開催されている、なかしまさやさんの「Mirror, mirror」にお邪魔し、お話を伺ってきました。

ユング心理学の重要なコンセプトともいうべき集合的無意識。
見えないものを形(シンボル)に落として表現をする。そのシンボルを見ることで、他の人の集合的無意識が共鳴するということに興味があります。自分の中の集合的無意識。そこからストーリーを表現するシンボルを取り出し、 それを見た人の中にある集合的無意識が共鳴する。 例えば母親との葛藤という、そういった経験をした人の気持ち、つまり他者の気持ちを理解しようと努力できるかということが、重要だと思っています。

ー作品のどこで共鳴するか、いろいろあるかもしれませんね。

そうですね、それを探っている感じですね。どこで共鳴するのか、例えば作品を見られた方に、胸に迫るものがありますとおっしゃっていただいて、おそらくその方とは共鳴できたのだと思います。違うなと感じられた方とはまだ共鳴できていないので、それができるようになるといいなと思います。  

ここでやろうとしているのは、母親との葛藤をもった人がどういった気持ちなのかというのを、じぶんのことのように感じる表現ができるかということを実験しています。自分でない人がした体験を、より自分のことのようにどうしたら感じられるかと考えたとき、人間に共通する 集合的無意識 が鍵になるのではないかというのが、作品の軸になっています。

この時代だからこそ、共鳴することは重要だと思っています。思いやりに通じるからです。目で見たことを心で感じて共鳴できたら、、、と思います。

アクリルキューブ作品もあります。

今後について、表現することは生きることと一緒であり、ずっと続けていきたいと思っています、とお聞きしたのが印象的でした。
自分が感じることは無関心でない以外、誰かと共鳴しあっていることなのだと感じます。それは目に見えないものだけれど、根源的なものであり大切にすべきことなのだと…。なかしまさんの白雪姫の世界は、私にとっての外ではなく自分の内面を見ているかのよう。ぜひご覧ください!

【なかしまさや 写真展「Mirror, mirror」】
会期:2021年3月24日(水)~3月27日(土)
15:00~21:00
最終日12:00~17:00
会場:Kiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery
http://kkag.jp/exhibitions/