春にかけて、6月の展示準備をしていた。
一つはギャラリーで行う清永安雄の「樹々変化」。もう一つはこの展示のプロモーションも兼ねて参加した「Bièvre国際写真展」だ。展示が少し落ち着いてきたので今のうちに振り返ろうと思う。
「樹々変化」は、清永が八ヶ岳山麓などで撮影した写真で制作した作品だ。取材時から連絡を取っており、作家本人も手応えを感じていたので作品の到着を楽しみにしていた。5月頃に届いたのはプリント40数点と、キャンバスへプリントしたロールが6本。モノクロのプリントは確かに力強い魅力を持っていた。
展示の準備は基本的には日本と変わらない。展示の構成を考え、作家とステートメントを練り、告知プランを立てて展開する。それに加えて今回は、パリ近郊で開催された「Bièvre国際写真展」でも告知に力を入れた。
今回は作品のビジュアルが強烈だったので、自然と告知ツールもかなり目を引くデザインになった。ポスターやDM、SNS広告でも、これまでの作品よりもかなり反応が良かったように思う。
また、作家が来仏できないこともあり、ギャラリーで流すVTRの制作にも力を入れている。やはり本人が来ないとどうしても作家の顔が見えづらい。作品鑑賞のスタイルは人それぞれだが、一鑑賞者としては、作品と作家はセットだと思っている。どんなバックグラウンドを持った人が、どのような状況で、どんな技術でなぜこのような作品を作ったのか。それらを知ってから作品を見ると、単なる“画像”ではなく展示全体を物語のように受け取ることができる。
告知展開がうまくいったこともあり、展示初日のヴェルニサージュはたくさんのお客様が来てくれた。
何より嬉しかったのは、以前清永の作品を購入してくれた方が、息子さんと来てくれて1枚作品を購入していただいたことだ。
作家ともどもこんなに嬉しいことはない。
アート作品は、インテリアとしての要素はあるかもしれないが、基本的には生活の役に立たない。ふつうの生活をしている人たちにとっては、購入するには高価なものだ。そんなアート作品に、対価を支払うほどの価値を見出していただけるというのは、作家にとってこれ以上ない賛辞だ。
ギャラリーで働く側としても、普段からたくさん販売できる商品ではないからこそ、販売があった時には大きな喜びがある。作家の努力を認めてもらえたようでとても嬉しい。
昨年の反動もあり、ヨーロッパのアートシーンは活発になっている。この勢いを保って7月中旬の最終日まで可能な限り、多くの方々に作品を見に来てもらいたい。