JPG’s FAVE#3 藤本祐菜 × 森下葵衣「見えないものを見ようとする時、深淵もこちらを見ている」

JPG’s FAVE#3 藤本祐菜 × 森下葵衣「見えないものを見ようとする時、深淵もこちらを見ている」
藤本祐菜 × 森下葵衣
2024/07/02 ~ 2024/07/14
Jam Photo Gallery

Jam Photo Gallery が注目する新進写真家をピックアップするJPG’s FAVE。第3回目となる今回は、大和田良が推薦する現在東京工芸大学芸術学部で写真を学ぶ藤本祐菜と森下葵衣の展示を行います。
自然風景や現象を観察しつつ写真を構成する藤本と、人物やモノを中心的なモチーフとしてきた森下には、感情や感覚の揺らぎに注目して表現を行う点で共通した視点が見られます。山形と長野、生まれ育った地域は離れていますが、それぞれの写真群とそれらが並置された空間からは世代特有の視座とも言えるものが感じられるでしょう。穏やかなだけでなく、不安や懐疑、焦燥を孕んだ二人の世界の見方からは、現代において写真表現を模索し続ける今の写真家の取り組みが見ていただけると思います。

初の二人展ともなる今回の展示をこの機会に是非多くの方にご覧いただければ幸いです。

 


 

森下葵衣
「願いの正体 2023」
幸せの象徴として、何を思い浮かべるか。
四つ葉のクローバーは、クローバーの変異体であり、10万分の1と言われている。見つけると幸せになるというジンクスが希少性の面から生まれた。一方で魔除けの意味を持つ十字架に似ていることやアイルランドの伝説から由来しているのではないかと言われている。幸せの象徴と言われているモチーフ、事象に焦点を当て、私たちは物事を違和感なく受け止めていること、感覚的に捉えてしまうこと、影響されやすいということを提起し、ものに対する意味や既成概念を問い直そうと考えた。幸せには、絶対的基準というものはなく、抽象的で相対的なものである。幸せの象徴と言われるものは具体的で親しみのあるものの由来は広く知られていない。しかしそれらが多くの人々にとって共通認識として存在するのだ。幸せのモチーフは幸せなのか。幸せのモチーフとはある人にとっては意味のないもので、ある人にとっては意味のあるものだ。他の物事と変わりないはずだ。多義性や逆説、隠喩といった要素を入れて、曖昧な境界の中でイメージがどのような問いをもたらすのかを考える。

 
藤本祐菜
「クラムボン 2023」
クラムボンは宮沢賢治の「やまなし」という物語に出てくるものだ。「やまなし」は二枚の幻燈、つまり写真から作られた物語である。写真から書かれた物語を読み、物語から写真にする。言葉での表現と写真での表現それぞれの特性を活かし補い合うことで、より解像度の高い「やまなし」を作り出すことを目指した。
クラムボンという生き物は存在しない。しかし、ぬいぐるみに名前をつけるように宮沢賢治は何かにクラムボンと名付けたと考えた私はクラムボンを探した。
川を覗き・眺め・入り見えてきたクラムボン像を写真に残した。

 


 

▼写真展概要
JPG’s FAVE#3
藤本祐菜 × 森下葵衣
「見えないものを見ようとする時、深淵もこちらを見ている」

会期:2024年7月2日(火)~7月14日(日)
   12:00-18:00(日曜17:00まで)
会場:Jam Photo Gallery(www.jamphotogallery.com
   〒153-0063 東京都目黒区目黒2-8-7鈴木ビル2階B号室