shirohanawa「記憶の触り方」
shirohanawa
2025/01/06 ~ 2025/01/19
Place M
ここ10年ほど、断続的に水の写真を撮り続けています。
物の本によると、生命は38億年ぐらい前に海の中で誕生したそうです。その後海中で進化を続け、我々の祖先が陸への進出を果たしたのが4億年ぐらい前らしい。つまり、物の本に書いてあることを信じれば、我々の祖先は誕生から陸へ上がるまで、ざっくり言って34億年ぐらいの間ずっと水の中にいたことになります。
ちょっと大昔の話をしてしまいましたが、そこまで昔のことを考えなくても、この世に産まれる前の我々は約10ヶ月という長きにわたって羊水の中にいた(もちろん、母子共に健康であれば、です)という動かし難い事実もあります。
分析心理学の入門書を何冊か読み散らかしたことのある私なんぞは、我々の祖先が水の中にいた頃の記憶も、我々が羊水の中にいた頃の記憶も、我々の心の奥底に今もうっすらと残っているのでは…と、水を撮影しながら夢想してしまうのですが、それは暇人の考えすぎというものなのでしょうか。
もちろん、水は生命を育むだけではなく、時にはとても暴力的になり、人間から全てを奪っていくこともあります。それでも、私の水に対する執着と言うか憧憬と言うか、そういうものはなかなか消えない訳で、それはやはり、我々の祖先が、そして我々自身も、水の中に長くいたことが理由なのではないかと考えずにはいられません。
水の振る舞いを観察し、その存在の本質を多少なりとも理解しようとすること。それは、生命が生まれ進化した太古の海に、そして自分が生まれ育った胎内に、想いを馳せる手がかりとなるはずです。ようするに、何が言いたいのかと申しますと、このような作品を作ることで、自分の心の奥底に眠っているかもしれない記憶、別の言い方をすれば遠かったり近かったりする自分のルーツ、そういったものに触れたい、わずかながらでもそのきっかけを作りたい、そういうことなんだと思います。
この作品が、観てくださった方の心の奥底に眠る記憶にも触れることができたら。そんなことが起こったらマジで素敵だな、と思いながら展示の準備を致しました。ご笑覧いただけたら幸いです。
■開催情報
shirohanawa「記憶の触り方」
How to Get in Touch With Memories
会期:2025年1月6日(月)〜1月19日(日)
会場:Place M(https://www.placem.com)
東京都新宿区新宿1-2-11 近代ビル3F