岐阜県飛騨市古川町金森町ほか

産業編集センター 出版部
2024/10/16 ~ 2024/11/15
岐阜県飛騨市古川町金森町ほか
【旅ブックスONLINE 写真紀行】
産業編集センター出版部が刊行する写真紀行各シリーズの取材で訪れた、全国津々浦々の風景を紹介しています。
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古の風情が色濃く残る城下町
岐阜県北部、飛驒山脈の西側一帯は広く飛驒地方と呼ばれている。かつての飛驒国に由来するもので、現在の高山市、飛驒市、下呂市、白川村を指す。北アルプスに囲
まれた山深い地域であり、全体の90%以上を森林が占め、そこから産する木材を使った家具や飛驒牛をはじめとする農畜産物が全国的に知られている。
飛驒地方の古町というと、高山市の町並み、いわゆる飛驒高山がよく知られているが、高山の北にある飛驒古川もまた、古の風情が漂う古町である。多くの人でにぎわ
う飛驒高山に比べて、それほど観光地化が進んでいない飛驒古川は、飛驒めぐりの穴場として静かな人気を集めている。
古川の町は、戦国時代、飛驒国高山藩の二代藩主・金森長近(ながちか)が築城した増島城(ますしま)の城下町として開かれた。以来、特に大きな戦乱や災害に見舞われなかったこともあり、城下町としての風情が今もしっかり残っている。
JR高山本線の飛驒古川駅を降りると、碁盤のような町割りと建ち並ぶ町家の風景が目に飛び込んでくる。駅から南に伸びる大横丁通りを歩けば、遠く見える飛驒山脈の山々を借景に、古い町並みがしっとりと佇んでいる。
中でも白眉は、町の中心を流れる瀬戸川とその川沿いに連なる白壁土蔵の風景だ。重厚な土蔵の前を流れる川には、色鮮やかな鯉が放たれており、道行く人々の歓心を
集めている。
しかし、この堀は鯉の放し飼いのためにあるのではない。もともとは、冬に雪かきをして集めた雪を流すためのものだ。雪深い飛驒地方では、このような流雪溝は多く
の町につくられていた。古川でも11月頃から四月頃まで、川の鯉たちは越冬のため、増島城址近くの池に引っ越しをする。
観光客もそれほど多くはなく、静かな時間がゆっくりと流れる飛驒古川の町。だが、年に一度、4月に行われる飛驒古川まつりのときは、全国から多くの人が集まり、町は沸騰する。九台の屋台を巡行させる「屋台行列」、数百人のさらし姿の裸男たちが太鼓を乗せた櫓を担いで練り歩く「起し太鼓」など、古川の町にふさわしい時代絵巻
が、2日間にわたって繰り広げられる。
祭りのあとは、何もなかったかのように古川の町はふたたび静寂に包まれる。
※『ふるさと再発見の旅 東海北陸』産業編集センター/編より一部抜粋







