石川県白山市鶴来本町ほか

産業編集センター 出版部
2025/04/15 ~ 2025/05/15
石川県白山市鶴来本町ほか
【旅ブックスONLINE 写真紀行】
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白山の麓にある霊峰信仰の聖地
石川、福井、岐阜の三県にまたがり、富士山、立山と並んで日本三霊山のひとつに数えられる白山。雪を頂き陽光を浴びて輝く姿に、古くから人々は「白き神々の座」として信仰し崇めてきた。白山を眺めるための遥拝所が設けられ、修行のために山へ登る白山登拝が行われた。加賀、越前、美濃にはそれぞれ登拝の拠点となる馬場(ばんば)が開かれ、このうち加賀馬場の中心となったのが鶴来にある白山比咩(しらやまひめ)神社である。全国に3000以上ある白山神社の総本山であり、加賀国の一宮として地元では「白山さん」と親しみを込めて呼ばれている。
この神社を起点に、白山へ登る「加賀禅定道(ぜんじょうどう)」という道が開かれ、その周辺に白山を信仰する寺社が建てられた。本宮側の四社と中宮側の三社のあわせて七社を「白山七社」と呼び、その中の一つである金きん劔けん宮ぐうも鶴来にある。白山比咩神社と金劔宮がある町——鶴来が白山信仰の聖地、あるいは〝ご加護のある街〞と広く呼ばれるようになった所以である。
一方で、白山市を流れて日本海に注ぐ手取川(てどりがわ)の扇状地にある鶴来は、古くから山の幸や海産物が行き交う交易の地として栄えた。その後、鶴来街道の宿場が置かれると宿場町としてにぎわい、酒や醬油等の醸造業を手がける商家が増えてくると在郷町としても発展していった。とくに現在でも醸造業が盛んなことから、鶴来は〝発酵の町〞として人気を集めつつある。重厚な味わいが人気の「菊姫(きくひめ)」、軽快ですっきりした飲み口の「萬歳楽(まんざいらく)」など、全国的に知られている銘酒の酒蔵や、明治10年創業の大屋(おおや)醬油店の重厚な建物が、今も町の中心部にほぼ当時のままにある。観光案内所として利用されている「横町うらら館」も築190年以上の町屋を改築した歴史ある建物だ。旧鶴来街道沿いにはそのほかにも昔ながらの家屋が点在し、往時の街道の風情がわずかだが残っている。
ちなみに、鶴来という地名は、金劔宮の門前町でもあったことから、かつては「剱」と表記されていたらしい。だが、江戸時代に度々火災が起こるなど災難が続いたため、同じ読みで縁起の良い「鶴来」という表記に改められたといわれている。
この町の地名の由来ともなっている金劔宮は、山梨の新屋山(あらややま)神社、千葉の安房(あわ)神社とともに日本三大金運神社のひとつとされている。発酵の町と金運の町、それが鶴来の新たな人気の秘密なのかもしれない。
※『ふるさと再発見の旅 東海北陸』産業編集センター/編 より抜粋






