~岐阜の山村に息づく伝説や歴史の気配を聞き写した世界~
民俗学に興味があったという写真家の柴田慶子さん。思いがけずバスで乗り合わせた人の言葉に自然との関わりや生業、歴史の深さを感じとり、その人の出身だという滋賀県揖斐郡にある春日地域の集落で聞き写しを始めたと言います。それから25年近く、山深くの峠にある中山と美束という集落へ足を運び、土地の古老たちから様々な話を聞き、写真を撮ってきました。
「この地域に自分の真実があると感じました。重要なのはその人の知性で見たり体験したりしたものであること。そうした体験に基づく場所を中心に、とにかくひたすら歩いて、見えないけれど確かにそこに何かあると感じたところにカメラを向けました。私が撮っているのは、人々の記憶です」
壬申の乱や関ヶ原の戦いに関連した落人伝説や炭鉱産業の歴史など、集落ごとに歴史や文化にまつわる話が今も現実のものとして息づいているといいます。柴田さんは、その人の知性で見たり体験した記憶、あるいは自然の中で感じる気配を、写真と文章で表現する方法を模索してきました。
会場には33点のプリント作品が展示されています。パネル張りされた作品の、もやっとした独特の風合いは、和紙に薬品を塗り太陽光で焼き付けたものをスキャンしてプリントしているからだそうです。一度手を加えることで、見えない記憶や気配の存在を感じさせます。
この村のファンを増やしたい、と柴田さん。これからも記録を積み重ね、写真で表現していきたいと抱負を語ってくれました。
9日(土)と11日(月・祝)は在廊されるそうです。ぜひ会場へ足を運び、失われかけている人の足跡に触れてみてはいかがでしょう。会場内に流れるキャスリーン・フェリアの楽曲もあわせてお楽しみください。
【柴田 慶子 写真展「聞き写し、春日」】
会期:2019年2月1日(金)~2月14日(木)
10:30~18:00(最終日は14:00まで)
会場:エプソンイメージングギャラリー エプサイト(日曜休館)
https://www.epson.jp/…/pho…/taiken/epsite/event/gallery2/19/
柴田慶子さんのWebサイト
http://mitabatakeyadani.blogspot.com/