Dream

Dream
高崎 勉
2016/04/19 ~ 2016/04/24
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 この作品をご覧になった貴方は何を想像されるだろう。流れ星。溶接の火花。宇宙ロケットが切り離した破片の軌跡。しかし、戦争に巻き込まれ命の不安を抱える人々の目には弾丸やミサイルの軌跡に映るかもしれない。
 リーマンショックが引き金となり、安定した時代に生まれ育った僕らは、不確かな暗闇に放り出されてしまった。そして毎日のように暗い話題が新聞の見出しになり、ネガティブな連鎖へ吸い込まれそうになるのを必死に耐えていた。
 はからずも不況の影響で家族とともに過ごす時間が増えた。その年の夏、実家の庭先で花火をした。そういえば最後に花火をしたのはいつだったろう。忙しい日々に追われ、線香花火の儚(はかな)い一瞬に思いを馳せる余裕さえ無くしていたようだ。昔、同じ庭で嗅いだ火薬の匂いに子供の頃の夢が想起される。
 残った線香花火をアトリエに持ち帰り、火をつけ、落ちてゆく火の玉の軌跡をカメラで追った。ひとつづつ、燃え尽きる時間や落ちていく方向が違う。シャッターを切るタイミングが全く予測つかない。静かに軌跡を描いたり、激しく火花を散らしたり、不安げにゆらゆら揺れたり、燻ったまま消えてしまったり。
 「儚い」の字のごとく、「人」の「夢」のようだ。
 最後の花火を終えたとき、僕は少年の心を少し取り戻した気がした。胸の奥にしまってあった夢のかけらに、また静かに火が灯った。
 自分を見失いそうなとき、大切な「何か」と対峙できる作品となるように。

高崎 勉