高村啓子 写真展「波打つ光」

高村啓子 写真展「波打つ光」
髙村 啓子
2024/05/21 ~ 2024/06/02
Jam Photo Gallery

都会で生まれ育った私は夏になると、両親の故郷である長野県へ度々避暑に連れて行かれた。木々の隙間から射し込んでくる木漏れ日は土の上に光と影を交錯させ、風が吹くと波のように揺れていた。あの頃、森に棲む多くの小さな生命の存在に気付き、自分もまた一つの生命として光を浴びていることを実感した。それらは夥しい蝉の鳴き声と共に記憶の底に眠っている。

今でもあの陽射しはあの場所で同じように輝いているだろうか。夏の眩しい輝きは時折、日常生活の中でサブリミナルのように私の心をよぎる。いつしか私は遠い記憶にある景色を求めて森へ行く。木漏れ日を浴びながら小さな生命の鼓動に耳を澄ませる。

銀塩写真の粒子感は木漏れ日を想起させる。もしかすると私は暗室に篭りながら、幼い頃に見た木漏れ日を追い続けているのかもしれない。植物に暗室で水遣りをして、瑞々しさを取り戻させることで私のプリントは成り立っている。記憶を辿りながら水の中であの時の残像を記録しているのだ。

 


 

▼写真展概要
高村啓子 写真展「波打つ光」
会期:2024年5月21日(火)~6月2日(日)
   12:00-18:00(日曜17:00迄)
会場:Jam Photo Gallery(www.jamphotogallery.com
   〒153-0063 東京都目黒区目黒2-8-7鈴木ビル2階B号室