佐藤圭司 写真展「ハノイ」

佐藤圭司 写真展「ハノイ」
佐藤 圭司
2024/11/18 ~ 2024/12/01
RED Photo Gallery

ハノイ

成田から約6時間、ベトナムの首都ハノイに降り立った。亜熱帯気候の高温多湿の空気が身体に纏い付く。飛行の中で着ていた長袖のシャツを脱ぎTシャツ一枚になった。

空港からハノイの旧市街に着き、ホテルに荷物を置き早速街を歩き始めた。東南アジアの国々ではバイクがとても多い。ハノイの街もバイクの交通量がとても多い。しかもハノイの交通には秩序がない。無数のバイクが右から左から前から後ろから信号に関係なく突っ込んでくるのだ。

これでよく交通事故が起きなものだと思った刹那、僕自身がハノイの交通の洗礼を受けてしまった。信号が青なのを確認して横断歩道を渡ろうとしたその瞬間、左からバイクに突っ込まれた。幸い軽い打撲で済んだが、日本なら警察を呼んで現場検証をすることになったであろう。バイクも荷物が散乱した程度で、ケガもなさそうでそのまま行ってしまった。一部始終を見ていた現地の男性が笑顔で「行きなさい」と手で僕に合図した。この程度は日常なのだろうか、何故突っ込まれたのかその時は理解できなかった。

ホテルで渡された英文の「旅行者の心得」の最初に道路の渡り方が書かれていた。「勇気をもって渡ろう。決して後ずさりしないように」と書かれていた。僕は目の前10cmのところに突っ込んでくるバイクにひるんで、歩みを少し止めたのだった。僕の後ろ10cmのところを突っ込んで通過するはずだったバイクは、僕がひるんで進む速度が変わったために僕に突っ込むことになったのだ。

ハノイの交通には秩序がないと書いたが、彼らには彼らの秩序があって、日本人目線だから無いように見えただけだった。郷に入りては郷に従え、だ。
以来、ハノイの道をビビりながらも「勇気をもって」渡っている。

ベトナムはフォーを代表とする米粉の麺が美味しい。中でもブンチャーはハノイの名物と言ってもいい麺料理だろう。ハノイでの最初の食事はもちろんブンチャーを選んだ。あらかじめGoogleMapで確認しておいたブンチャーの美味い店をチェックしておいた。

その店は、店と言うより屋台に近かった。客席は歩道に置かれたテーブルと椅子だけだった。「店内」と言うものは存在しない。僕はその椅子の一つに腰かけると愛想のいいおばちゃんがオーダーを取りに来た。ブンチャーを頼むと、笑顔でトッピングを勧めてくる。商売上手のおばちゃんに乗せられて全部乗せのオーダーになった。日本円で800円くらいだろうか。

食べ方がよくわからずにいると、おばちゃんが食べ方を教えてくれた。トッピングをブンチャーの中に入れて、麺と一緒に食べるのだ。美味しい。正直、見た目は美味しそうには見えないが、日本人の口に合うと思った。

交通と食べ物が馴染めば旅は上手くいく。そうして僕はハノイの人となった。

佐藤圭司

 


 

■開催情報
佐藤圭司 写真展「ハノイ」
会期:11月18日(月)〜12月1日(日)
会場:RED Photo Gallery
   東京都新宿区新宿1-2-11 近代ビル2F
  (Photo Gallery Place Mと同じビル内)

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