私は土地と繋がっていない。それは、日本に来たことで初めて気づいた。香港で生まれ育った私にとって、土地は自分のものとして所有する対象ではなく、高価で手の届かない存在だった。狭い部屋を転々とする生活の中で、「ここが自分の居場所だ」と感じたことはほとんどない。知人であっても、土地に根差した記憶を共有する機会は限られていた。
私は東京近郊の風景に強く惹かれた。人々は広い土地を所有し、自分の家を建てて暮らしている。その光景は、香港の無機質な高層ビル群とは全く違うもので、土地そのものが人々の生活に組み込まれているようだった。そこでは物理的な境界が曖昧になり、土地の範囲はどこまでかを目視で確認できず、人々が互いに尊重し合うことで成り立つ「見えない境界線」があるように感じられた。まるで、人間が動物のように縄張りを持ち、そこに自らの存在を刻んでいるようだった。

王 康裕「Land Boundary」
会期：2025年2月18日（火）〜2月23日（日）
　　　12:00 – 19:00
会場：TOTEM POLE PHOTO GALLERY（https://tppg.jp）
　　　東京都新宿区四谷四丁目22 第二富士川ビル1F　　　

公式サイト掲載ページはこちら