熊谷聖司「この柔らかい箱をここに置くよ」

熊谷 聖司
2025/07/03 ~ 2025/07/28
book obscura
熊谷聖司さんの最新刊「この柔らかい箱をここに置くよ」の発売を記念して写真展を開催致します。本展示では写真集に掲載された作品10枚(予定)を展示販売し、写真集も同時に発売致します。
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いつも言葉では表せない何かを写真でやっている
2019年から制作している「心」シリーズを見ながら
浮かんできた言葉
この柔らかい箱をここに置くよ
柔らかい箱って
どんなだ?
俺にもよくわからない
ただ目をつむっても手触りだけは手のひらにある
文・熊谷聖司
写真の語源は光と影の絵。
光が無ければ私たちは闇を彷徨い続け、更には青空もビル群も花も全ての色が認識出来なくなります。
舞台で舞い踊る演者にあたるスポットライトのような光を認識するのはさほど難しい訳ではなく、解りやすいからこそ「今!この人の話しですよ!」と視覚効果として使われ続けています。では、演者にあたるスポットライトのような光が光なのか。と、言うとどうでしょうか。
光は解りやすく目に見えているものなのでしょうか。
天使の梯子と言われるような光の道筋が見えなくても、今、目の前にあるものの色が認識出来ると言う事はそこに紛れもなく光が降り注いでいるという訳で、その光は残念ながら物質として人間に視覚で、はたまた重さや触り心地として認識出来るものではありません。
でも確かにそこに光は存在していて、それらを写せる「カメラ」で捉え、光を印刷できる印画紙などに焼き付けて来たのが写真家なのでしょう。
写真家は目に見えない光を可視化させてくる人達と言えるのかもしれません。
熊谷聖司の写真を見ていると、空間に光が溢れていることがとても解ります。それらはそよ風で揺れる透き通るレースのカーテンのようなものなのかもしれません。
写真家と被写体との間にそのレースのカーテンは何層にも実は重なっていて、熊谷さんは正しく目でそれらに触れ、手触りとしても捉えているように思います。レースのカーテンを掴んでみると無限の可能性があったのでしょう。真っ青にしてみたり、ぼかしてみたり。
被写体に降り注いでいる光なのか、熊谷さんの目の前にあった全てのものに降り注いでいる光なのか。
今回も笑っちゃうほど、カーテンの層が分厚く、それらを使って実験を繰り返しています。光を印刷できる印画紙に焼き付けたオリジナルプリントで観れる機会を頂いた事を感謝すると共に、写真たちが鑑賞者の心にどのように触れてくるのか楽しみで仕方ありません。
皆様と一緒に置かれた柔らかい箱なるものを、ただ眺めて行きたいと思っています。
ご来場を心よりお待ちしております。(文・book obscura 黒﨑由衣)
■開催情報
熊谷聖司「この柔らかい箱をここに置くよ」
会 期:2025年7月3日(木)- 2025年7月28日(月)
12:00-19:00/日曜日のみ 12:00-18:00
会 場:book obscura(東京都)
定休日:火曜日・水曜日
■書籍概要
この柔らかい箱をここに置くよ/熊谷聖司
¥8,800(税込)
出版社:マルクマ本店
発 行:2025年7月21日 第1刷 限定500部
サイズ:290x230x14mm
ページ:80pp
仕 様:上製本
印 刷:株式会社山田写真製版
装 丁:高橋健介
作家プロフィール
熊谷聖司 写真作品を制作する人
写真作品、写真集制作を中心に活動中
2020年スタジオ開設・カラー暗室 / 8X10 カメラ講座などを行う
1966年 北海道函館市生まれ
1987年 日本工学院専門学校卒業
東京都在住
個展に「もりとでじゃねいろ」「あかるいほうへ」「spring,2011」「EACH LITTLE THING」「RE FORM」「心」「あなた」写真集多数
レーベル「マルクマ本店」運営
マルクマ本店:kumagaiseiji.buyshop.jp
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