本多康司「浮景」

本多 康司
2025/08/14 ~ 2025/09/08
Exhibition Archives
8月14日(木)より、THE BOOK ENDでは、写真家・本多康司 写真展「浮景」を開催いたします。
本展は2025年2月に東京・西荻窪に店を構える古道具店・poubelle(プベル)で 開催された展示の巡回展となります。
黒い海の海辺にある古く小さな家を6年間借りていた
月に一度、都会の港から夜行船に乗る
早朝、島に着き、いつも立ち寄る黒い砂浜
また来れた
(写真集のテキストより抜粋)
6年間、島に家を借りて、月に一度ほどのペースで通っていました。
写真を撮る為というより家族とゆっくり過ごしたり、友人たちと楽しんだりする為に 島に行っていたのですが、同じ場所に何度も行き、その繰り返しの中で、気づけば同じような写真を沢山撮るようになりました。
自然がもつ圧倒的な力の前では、同じように見えて同じ場所なんてなく、時間の集積の中でしか見えてこないものを感じ、 それらの風景を経験として記憶していきたいと思うようになりました。
その断片を繋げてくれるのが今回の写真だったのかもしれません。
本多康司
西荻窪駅から中心街を抜けて車一台がやっとの細い道幅を歩いていく道中は人の姿もまばらで、 分厚い雲に冬の光が遮られた鉛色の空、そして馴染みのない場所に対する不安から、 当時は携帯の地図を頼りにしていてもなお、どこか心許なさを感じていました。
しかしそれも到着するまでのことで、poubelleの店先に掲げられたささやかな看板と、 少し階段を登った先のドアのすりガラスから漏れ出す薄明かりを見つけてからはとても安心感を覚え、ドアノブに手をかける頃には不安から期待へと気持ちが切り替わっていたことを覚えています。
そうして足を踏み入れた店内では、国や年代、用途を問うことなくpubelle店主の矢澤さんの審美眼で集められた品々と、本多さんの写真が調和する形で展示されており、じっくりと店内を巡っていきながら見る角度や順序を変えるごとに新たな表情を見せる品々と写真、それぞれの佇まいへと強く惹かれていきました。
写真に寄っては離れ、また近づき、卓上や壁面、足元を彩る品々にも目を向けて、 再び写真へと目線を戻す。
そうして写真を様々な角度や順序で見ていくにつれて、この写真たちは展示空間や季節が変わることで、どんな変化がもたらされるのだろうかという好奇心が胸のうちに湧き上がっていき、本多さんへTHE BOOK ENDでの展示についてご提案したことが、今回の巡回展のきっかけになりました。
冬から季節が巡って春を過ぎ、晩夏を迎えた今。
THE BOOK ENDの空間で本多さんの写真はどのように目に映るのでしょうか。
pubelleでの展示を拝見された方も、ぜひ足をお運びいただけますと大変嬉しく存じます。
島に定住するのではなく、定期的に訪れるからこそ幾度となく本多さんの目に留まり、6年の歳月を経て立ち現れた、情趣ある風景の数々をお楽しみください。
▼開催情報
本多康司「浮景」
会期:2025年8月14日(木)− 9月8日(月)
11:00-18:00
火・水曜定休 / 入場無料
会場:THE BOOK END
兵庫県神戸市中央区海岸通3-1-5 海岸ビルヂング 302 THE BOOK END
080-7007-6949 / hello@the-book-end.com
Website:https://the-book-end.com
※駐車スペースはございませんのでお車でのご来店はご遠慮ください。
※展示物の関係上、祝花はお断り申し上げます。
※入場制限やアポイントメント制とさせていただく場合がございます。あらかじめご了承ください。
▼プロフィール
本多康司 / Koji Honda
1979年愛知県生まれ兵庫県育ち。
熊本大学工学部卒業。
長野博文氏、泊昭雄氏に師事後、2009年に独立。
コマーシャルフォトグラファーとして活動する一方、作品制作として「suomi」「集合写真」「madori」「wandar-めぐる」「Trans-Siberian Railway」などを発表。
https://honda-koji.com/
https://www.instagram.com/honda_uta/
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