~ 第2回 入江泰吉記念写真賞受賞の女性写真家! ~
壁いっぱいに飾られているのは群馬県・浅間山北麓に位置する北軽井沢の森林を映した作品。1月から12月の順に、季節の移り変わりや深い森林が見せる様々な表情を楽しめます。
神奈川の都市に生まれ、現在は森で暮らし写真や映像など表現者として活動している田淵三菜さん。エンターテインメントの世界で活躍したいと就職活動をしていた大学生の時、東日本大震災が起こり、「生きていくってどういうことなんだろう?」と考えるようになったと言います。都市で暮らすにはお金が必要で、お金を稼ぐためには自分の時間を削って働いて…。
「不器用だから考え込んでしまい、こじれてしまったんです。そういう人間的な自分がいる一方で、健やかに生きようとする生き物としての本能もあって。憔悴していたときに、両親が叔父の別荘へ連れて行ってくれました。そこには子どもの頃の真っ直ぐな自分がいて、目の前に広がる大自然が温かく迎えてくれたように感じました」。
ショートステイのつもりで北軽井沢で暮らし始めたある冬の朝。窓の外に広がる一面の銀世界に目を奪われた田淵さんは、20歳のお祝いに買ってもらったカメラを手に森の中へ入って行ったそう。
「森の中を歩きながら見る世界は私にとって“バージン体験”でした。その体験や感動を残したい、皆に見てもらいたいという思いから写真を撮り歩きました。そうすると、窓越しに見ていただけでは分からない様々なことが森の中で起こっているのに気付きます」。
初めは1カ月に1冊、30枚の写真を編んだオリジナルのミニフォトブックを作成して人に配っていたそうです。そのうちに文章を添えた写真を1カ月に1枚、近くのレストランで展示するように。それが1巡した頃、1年というスパンで森の体験を伝える方法を模索し、写真と文章で表現した写真集を作りたいと賞に応募したのだと田淵さんは教えてくれました。今回は、その中から厳選した作品48点を展示。
「この写真展は、私が初めて出会った北軽井沢の森林で初めて写真を撮り始めた時の体験や感動を追体験してもらえるようにと意識して展示しています。様々なご意見もいただきますが、技術を追求するのではなく、“my favorite things”にこだわり、その体験を表現するということにこだわっていきたいと考えています」。
8月4日(金)18:30からは、入江泰吉記念写真賞の審査員であり、写真評論家として名高い飯沢耕太郎さんを招いてのトークイベントが開催されます。
生きていく上で、自分のオリジナルを感じていたいという田淵さんの思いが溢れる作品に囲まれて森を感じてみたい方は、ぜひ足をお運びください。
【田淵 三菜 写真展「into the forest」】
会期:2017年7月31日(月)~8月13日(日)12:00~19:00
会場:Place M
http://www.placem.com/schedule/2017/20170731/170731.html