二月空 写真展「呼動(こどう) ~日付のない写真~」

レポート / 2018年12月14日

~見る人の心を動かす、古い印画紙に重なった叙情世界~

古い印画紙に焼き付けた3部作。紙の状態によりプリントに幅が出るためエディション数は非常に少ないです。写真の枠部分の色ムラや、像を揺らめかせるような模様が、作品表現とマッチしています。

古書の町・神保町の有名な喫茶さぼうるの2階にあるギャラリー福果は、様々なアート作品を展示している老舗のギャラリーです。階段を上がって扉を開けた先には、温かみのある空間が広がります。

ロングカードサイズの作品。ここ4年制作しているカレンダーのサイズ。これらも古い印画紙に焼いたもの。全体がグレートーンのものや、一部に色ムラが出ているものがあり、作品の中に広がる叙情的な雰囲気を盛り上げています。

現在展示されているのは、カレンダーなど紙ものを中心にデザイン、撮影、編集などの活動をしている二月空さんの写真作品です。撮りためたフィルムの中から、これまでのカレンダー制作に使った写真とその同じフィルムに写した場面を選び、今回の展示にあわせてプリントしたそう。中でも特徴的なのは、古い印画紙にプリントした作品です。

36枚綴りのフィルムには、その時の時間や空気が映り込んでいます。展示では、これまで制作してきたカレンダーに使った写真や、そのフィルムに写した他の場面も展示されているため、見応えがあります。

「古い印画紙の箱が残っていて、現像すると経年による諧調の違いや色が出てきました。本来ならコントラストが出なくなるからと敬遠されますが、時を経た印画紙を今回はあえて活かして仕上げました」

状態によって模様やグレーの階調などが現れているのが面白く、印画紙の定められた期限を越えて広がる表現の豊かさを感じます。

また、優しい空気が折り重なったような作品群を見ていると、自分の記憶や心の中を覗いているような錯覚を抱きます。二月空さん曰く「それを〈呼動〉というタイトルに表現しました。写真を撮っていると、見ているようで被写体に見られている感覚になることがあります。作品を自分のものとして自由に見ていただければ」とのこと。

二月空さんがファインダー越しにそっと覗いた世界。

二月空さんがそっと覗いた世界、折り重なる時間が表現されたグレーの階調を見に、ぜひ会場へ足をお運びください。心の窓を開いて見れば、自分と呼動する一枚に出会えるのではないでしょうか。

カレンダーの写真部分を「窓」と表現する二月空さん。月の窓として使ってきたカットを、今回は1枚の写真として。

二月空さんは、19年間作り続けたカレンダーを今年は制作しないそう。この写真展は、これまでのカレンダーで使われた写真や、その周辺の写真を見ることができる貴重な機会です。

【二月空 写真展「呼動(こどう) ~日付のない写真~」】
会期:2018年12月12日(水)~12月22日(土)
12:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:ギャラリー福果(会期中は無休)
http://gallery-fukka.com/index.html

二月空さんのWebサイト
https://www.nigatuzora.com/