~見る人の心を動かす、古い印画紙に重なった叙情世界~
古書の町・神保町の有名な喫茶さぼうるの2階にあるギャラリー福果は、様々なアート作品を展示している老舗のギャラリーです。階段を上がって扉を開けた先には、温かみのある空間が広がります。
現在展示されているのは、カレンダーなど紙ものを中心にデザイン、撮影、編集などの活動をしている二月空さんの写真作品です。撮りためたフィルムの中から、これまでのカレンダー制作に使った写真とその同じフィルムに写した場面を選び、今回の展示にあわせてプリントしたそう。中でも特徴的なのは、古い印画紙にプリントした作品です。
「古い印画紙の箱が残っていて、現像すると経年による諧調の違いや色が出てきました。本来ならコントラストが出なくなるからと敬遠されますが、時を経た印画紙を今回はあえて活かして仕上げました」
状態によって模様やグレーの階調などが現れているのが面白く、印画紙の定められた期限を越えて広がる表現の豊かさを感じます。
また、優しい空気が折り重なったような作品群を見ていると、自分の記憶や心の中を覗いているような錯覚を抱きます。二月空さん曰く「それを〈呼動〉というタイトルに表現しました。写真を撮っていると、見ているようで被写体に見られている感覚になることがあります。作品を自分のものとして自由に見ていただければ」とのこと。
二月空さんがそっと覗いた世界、折り重なる時間が表現されたグレーの階調を見に、ぜひ会場へ足をお運びください。心の窓を開いて見れば、自分と呼動する一枚に出会えるのではないでしょうか。
【二月空 写真展「呼動(こどう) ~日付のない写真~」】
会期:2018年12月12日(水)~12月22日(土)
12:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:ギャラリー福果(会期中は無休)
http://gallery-fukka.com/index.html
二月空さんのWebサイト
https://www.nigatuzora.com/