阿部 晴子 写真展「Cafe Sepia」

レポート / 2018年12月11日

~アンティークカフェに流れる時間や人のぬくもりを丁寧に写し取った作品~

会場にて阿部さん。20代の頃、仕事の一貫で撮った小さなプロフィール写真に納得がいかず、どうすれば綺麗に撮れるのかと考えたのが、フォトグラファーの道に踏み出すきっかけだそうです。写真を学び、毎日会社帰りに暗室へ通うほどのめり込んでいった阿部さんは、さまざまな写真集を読み、感銘を受けた松本路子さんのワークショップでさらに作品づくりについて研鑽を積んだそう。

作品づくりにおいて、気持ちを込めることや、愛情を持って何かをすることを大事にしていると話す、フォトグラファーの阿部晴子さん。写真塾で写真を学び、暗室に通いつめ、写真家の松本路子さんのワークショップへ参加するなど、どんどん写真の世界にのめり込んでいったと言います。阿部さんが自分の撮りたい世界やテーマが明確になったのは、古机と椅子を写したことがきっかけだそう。

阿部さんが作品づくりで大切にしているのは、自分が惹かれたところにフォーカスすること。松本路子先生から学んだことだと言います。 「自分が惹かれた何かに対してシャッターを切ることを心がけています。構図の中でしっかり伝わるように、思い切ってフォーカスしちゃいますね」と阿部さん。作品はすべてノートリミングだそうです。

「どういう写真を撮るか悩みながら心に惹かれたものを撮っていく中に、旅館の古机と椅子を写したものがありました。それを見て、この写真に連ねるものを撮りたいと強く思いました。骨董品って、いろんな世代の人たちが大事に遺してきたもの。どこかの時代で捨てられていたら今この世に残っていません。そこには一人ひとりが愛情を込めて接してきた想いや記憶が詰まっています。そうした人の想いや空気を表現したいと考えています」

アンティークカフェにある磨りガラスを写した作品。ノスタルジーを感じると同時に、人のあたたかみが伝わってきます。「街を見ると同じようなお店が増えたように感じます。でも私の通うアンティークカフェには、店主の好きなものに溢れ、個性がある。そういう、ここにしかないお店が、残ってくれるといいなという想いもありますね」と阿部さん。

一生をかけたいと思える写真に出会えた自分は幸せだと、阿部さんは話してくれました。
写っているのは古時計や装飾のすりガラス、人形、アンティークの食器など。阿部さんが通いつめているという東京近郊にあるアンティークカフェの店内や古道具などを撮影したモノクローム作品です。

会場の様子。2006年の初個展以来、12年ぶりの写真展だそう。「仕事をしているといろんなことがありますが、写真を撮ることが息抜きになって、私の中でうまくバランスをとっています。これからもカフェを撮り続けたいですね」と、阿部さん。今回の展示を一区切りとして、人物や日本的なものなど世界を広げていきたいと展望を話してくれました。

モノに心が宿るように、阿部さんが大切に撮りためてきた写真作品にも心が宿っているよう。一枚一枚から、古道具を大切に使ってきた人々のぬくもりが伝わってきます。

会場に展示されているのは21点のモノクロームフィルム作品です。
プロプリンターの金子典子さんが「阿部さんの作品は世界観や雰囲気が一貫しているのが魅力です。作品性が高く、ネガに情報がきちんと映り込んでいるのはさすが!」と絶賛する阿部さんの作品を見に、ぜひ会場へ足をお運びください。

会場の様子。何気ない風景ですが、なぜか心にじわりじわりとしみ込んできます。
作品は会場内で展示販売されています。

【阿部 晴子 写真展「Cafe Sepia」】
会期:2018年12月9日(日)~12月15日(土)
12:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:アートギャラリー石
http://artgalleryishi.com/
企画:一般財団法人 戸部記念財団
問い合わせ:アトリエ シャテーニュ
http://atelier-chataigne.org/

阿部さんのwebサイト
https://harukoabe.amebaownd.com/