ルーニィ企画展 鈴木 ノア「道化の森が眠る頃」

レポート / 2017年11月15日

ブロムオイル・プリントで表現された、寂寞とした幻想的な世界!

東京・小伝馬町にある「ルーニィ・247 ファインアーツ」は、写真作品を中心に取り扱うギャラリーです。2室の展示スペースとウォールスペースがあり、年間10本ほどの作品展が企画されています。今回の展示はそのうちの一つ。

展示されているのは、ブロムオイル印画法で表現された幻想的なオリジナル・プリント17点です。ブロムオイル印画法とは、ピクトリアリズム(絵画主義)が流行した1880~1890年頃に用いられた古典技法。モノクロプリントを漂白して銀塩の粒子を取り除いた後、インクを叩き込むことで吸着させるという、アナログ作業のため、すべて1点モノ。現在この複雑な技法で作品をつくっている写真作家は日本ではめずらしいのだそう。

「複雑なアナログ技法でつくられているにも関わらず、作家さんの好意で比較的手の届きやすいプライスになっています。コレクションするのにピッタリの作品で、どれから手をつけて良いか分からない方にオススメです」と篠原さん。全て1点モノで、それぞれが作品として完成しています。展示が終わった後も、作品自体は取り扱っているそうなので、興味のある方は足をお運びください。

写真作家の鈴木ノアさんは、2011年頃からブロムオイル印画法を用いた作品を発表しています。紗(しゃ)をかけ不鮮明にするなど、表現をコントロールしながら自身のイメージを作り上げています。現実と空想が入り混じったような曖昧な作品世界の中で、かすかに鳥の映る作品が数点あるところが、鈴木ノアさんという作家のキャラクター性を伝えているのだと、篠原さんは言います。

ブロムオイル印画法による独特の色調で表現された「道化の森」らしい幻想的な風景。インクの色や濃度などと相まって、曖昧なイメージの世界に没入できます。

--企画展をディレクションするにあたり、何にこだわりましたか?

篠原「ピクトリアリズムにオマージュされた作品は、ある種の喜びがあります。ノアさんの作品の持ち味である、現実に背を向けて思いに耽る寡黙な世界観が伝わるように、点数を絞っています。あえて時間や場所を示す要素のない風景は、どこかで見たことのあるような気持ちに、あるいは観る人の記憶を呼び起こすのではないでしょうか。小さな空間ではありますが、ブロムオイルという珍しい技法でつくり出された、鈴木ノアさんの世界観を、ゆっくり見ていただればと思います」

ブロムオイル・プリントで表現された、鈴木ノアさんの幻想的な世界に興味のある方は、ぜひ会場へ足をお運びください。

「彼女がブロムオイルプリントで制作しはじめた5〜6年ほど前から、作品をずっと見てきました。この複雑な技術を自分のものにしていて、モノとしての魅力が上がっているのを感じます」と篠原さん。

「情報を伝えるという写真の本流から外れている世界。本人も、どの場所か分からないように撮っています。人に伝えることに興味がないんですね。そうした現実に背を向けているような姿が、鈴木ノアという作家の持ち味です」と篠原さん。

「作品に込められた作家のメッセージは、観た方が好きに受け止めてもらえれば良いと思います」と篠原さん。

【ルーニィ企画展 鈴木 ノア「道化の森が眠る頃」】
会期:2017年11月7日(火)~11月19日(日)
12:00~19:00(最終日は16:00まで)
会場:Roonee 247 fine arts(月曜休廊)
http://www.roonee.jp/exhibition/room2/20171024134040