萬田 康文 写真展「PHOTOGRAPHS, PICTURES 最後に残った記憶の澱のようなものたち」

レポート / 2018年10月16日

曖昧な境界に感性を刺激される作品

馬喰町ART+EATは、人と人、人とアートが楽しく出会うがコンセプトの、ギャラリー/カフェです。アートに囲まれた居心地の良い空間でおいしいものを食べる至福の時を楽しめます。馬喰町界隈にはRoonee 247 fine artsをはじめさまざまなギャラリーが集まっているので、アート巡りの一休みにもぴったりです。

入口付近の壁には暗い色調の作品が並びます。
作品は店内にて展示販売されています。

展示されているのは、一見しただけでは境界が曖昧で抽象的に見える写真作品です。一方で、じっと作品と向き合っていると奥に隠れている情景が浮かびあがってくるのが分かります。
写真家・萬田康文さんにとって一番の謎は自分自身。自分を知るために、仕事で撮るものとは真逆の写真を撮っているそう。シャッターを押す時は無意識で、暗室でネガにしてプリントにしてから考える。その過程で他人のイメージに影響を受けているものは全て取り除く。これを何度も繰り返すうちに、自分というものがあぶり出されてくるのだといいます。

奥の壁には、思わず色や形や質感に魅入ってしまう作品だ並びます。「公の場で行う展示は自分をさらけ出す行為です。撮って焼いて展示するところまでしないと、写真が成仏しない気がしています」と萬田さん。

「僕は写真という道具を通して自分の個性に気づきました。世界って意識して見るとけっこう普通におかしいんですよ。普通の中にいろいろなものが潜んでいる。例えば電車内を意識して見ると、皆それぞれに個性があることに気づきます。一人として普通の人はいません。同じものを見ても人によって見え方や感じ方は違います。この作品に答えはありません。何を撮っているかではなく、見る/考えるということを意識してもらえればそれで十分です」

自分自身について問いかけてきた萬田さんの作品だからこそ、見る人の感性を揺さぶり考え気づくスパイスが隠されているのかもしれません。
撮影や暗室のなかで生まれた曖昧な境界に感性を刺激されてみたい方は、ぜひ会場へ足をお運びください。

一角では萬田さんの著書『酒肴ごよみ365日』(2017年・誠文堂新光社)なども購入できます。気になる方はサンプルを見てください。

【萬田 康文 写真展「PHOTOGRAPHS, PICTURES 最後に残った記憶の澱のようなものたち」】
会期:2018年9月14日(金)~10月31日(水)
12:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:馬喰町ART+EAT(日月祝休廊)
https://www.art-eat.com/event/mandayasufumi2018/

写真事務所兼アトリエ「カワウソ」
http://www.outotsusha.info/kawauso/