林 敏弘 写真展「風と光の記憶 モノクローム・ピンホール写真」

レポート / 2018年11月12日

自然から集めた光を写し込む

入口正面に、林さんの人生を変えた初のピンホール作品が展示されています。

ピンホール写真家として20年以上作品づくりをしてきた林敏弘さん。初めて自作のピンホールカメラで地元の港をテスト撮影したとき、時間や空気や風や音までが再現されているのを見てゾクゾクする衝撃を受けたと言います。
気持ち良い秋の夕暮れ、風に流れる柔らかい光と雲、ゆらゆらと揺らめく係留中のボート…そこには何度もレンズカメラで撮ってきた景色とは全く違う世界が広がっていたのだと教えてくれました。

「レンズカメラが時間を切り取るものだとすると、ピンホールカメラは自然から光をいただいて集めるもの。だからこそ時間の流れが写ります。一枚を撮るのに時間はかかりますが、その分、被写体と対話することができる。ピンホールで初めて撮った一枚が、私の人生を変えました」

ピンホール写真に出会ったからこれまで写真を撮り続けることができ、写真があったからこそ様々な人と出会うことができたと、林さん。写真は写真家自身の存在や気持ちを投影するためのもので、個展は自分の作品と対話する場所なのだそう。そのため作品づくりで心がけているのは、見ていて飽きない作品、10年20年経っても好きな作品であることです。
フィルムや印画紙の生産減により今後はデジタルに移行し、ロケーションを変えて新たなピンホール作品づくりを模索していきたいと展望を語ってくれました。

現像は自宅の暗室でするのだという林さん。「暗室作業に夢中すぎて、若い頃は休日の朝10時から夜24時までずっと暗室に籠っていたこともあります。今はせいぜい6時間くらい(笑)」。定年退職をして時間ができたので、作品づくりに集中できると笑顔で話してくれました。

会場では、20年の集大成として出版した写真集『風と光の記憶』の中から40点の作品をセレクトして展示販売しています。モノクロフィルムで撮られたピンホール作品の前に立つと、自分はこんなに柔らかい光に包まれた世界で生きているのかと、温かく穏やかな心になる気がします。
展示期間中、林さんは毎日在廊しているそうなので、ぜひ会場へ足をお運びください。

会場には、林さんの地元である千葉・船橋をメインに撮影したモノクロームのピンホール作品が並ぶほか、林さんが初めて自作したというピンホールカメラも展示されています。

今回出版した写真集『風と光の記憶』(写真左)と、以前出版したカラーのピンホール写真集『流れる時間と遊ぶ光』(写真右)。

【林 敏弘 写真展「風と光の記憶 モノクローム・ピンホール写真」】
会期:2018年11月5日(月)~11月17日(土)
10:30~18:30(最終日は17:00まで)
会場:Art Gallery M84
http://artgallery-m84.com/?p=5407

林敏弘さんのWebサイト
http://www.toshi-photo.com/