五年ほど前の話。
実家の母が癌で亡くなった。
程なくして前妻と別れた。
ずっと続くと思っていたものがあっけなく終わった。
母が病室にいる時もその後も何の役に立つかわからないけれどシャッターを切った。
実家と東京を往復しながら半ば義務であるかのように写真を撮った。
写真は撮られたその瞬間から現実とは違う方向へ走り出す。
ましてや撮ったときの気持ちなんて写るわけがない。
気持ちが写っているように見えたならばそれは写真に騙されている。
にも関わらず撮った自分自身が写真を見返して騙され記憶に刷り込まれる。
それでいい。
一枚一枚写真を撮り続けながら僕はほんの少しずつ都合よく記憶を書き換える。
そうすることによってだけ前に進むことができる。
いや前に進むことができると信じたい。
作品の中で伝えたいことについてお伺いしました。
肉親の死や大事な人との別れなどで精神的に疲弊していた時期に撮影した写真なので、風景を撮っていることが多いですがそれは写真にどことなく現れていると思っています。間接的にではありますが、当時の自分の心情を微かにでも感じていただければ幸いです。
RED Photo Galleryのメンバーである中川仁史さんの最新の写真展。
私自身も親の介護に疲れているのかもしれません。何だかじんわりときました。
22日(日)までの開催になります、ぜひ足をお運びください。
【中川 仁史 写真展「Tokyo - Fukuoka」】
会期:2020年11月9日(月)〜11月22日(日)
12:00~19:00
会場:RED Photo Gallery
https://photogallery.red/schedule/2020/20201109/exhibition.php
中川さんのWebサイト
https://satoshinakagawa.com/