村上 雄大 写真展「WILD GARDEN」

レポート / 2019年3月6日

〜庭園は外を感じさせる特別な場所~

会場にて、村上さん。「本来はテーマやコンセプトを決めて撮るタイプじゃないんです。テーマは結果的に立ち上がってくるものだと考えているので。だからこそ、より純粋に撮りたいと思ったものを感覚的に撮ってきました。そういう意味では、今回の展示は先に撮りたいテーマがあり、僕としては異色の作品ですね」とのこと。何かを伝えたいというよりは、写真でしか感じられないことがあるのだと、話してくれました。

会場に展示されているのは、京都府立植物園にて撮影された31点の作品です。タイトル「WILD GARDEN」は、植物園にある野生風のエリアを指した名称とのこと。作品には、村上さんの優しい視点でとらえた植物園の様子が収められています。

京都府立植物園の各エリアをおさめた作品が並びます。庭園内ではありますが、一枚一枚に外を感じさせられます。岡山ー京都間をバスで移動すること3回。「長く撮るものではなく、さっと切り取っていくもの」と村上さん。

写真家である村上雄大さんは、これまで地元である岡山・津山を撮影した叙情的な作品を発表してきました。2年前の夏、心臓の病気で突然の入院を余儀なくされた村上さんは、病院の敷地にあった庭園が特別な場所に感じられたそう。庭園をテーマにした写真を撮りたいと考えていた時に、写真集の出版で交流のあった蒼穹舎の大田さんから京都府立植物園を勧められ、実際に訪れたところ気に入り撮影を始めたと言います。

写真左側の壁に展示されているのが、表題に使われている「ワイルドガーデン」エリア。細い小道の脇に並ぶ植物がとてもワイルド。

「撮影したのは退院後の、厳しい天候が続きこれからどうなっていくのか恐怖させられる夏と秋を経た、冬から春にかけて。気づかなかったら死んでいたかもしれないギリギリで生かされたからこそ、撮影や展示をすることができています。今後は自我から距離のある外界へ視野を広げ、自分が生きているところに何かある、というものを撮りたいと考えています」

会場では、31点の作品を展示販売しているほか、2018年1月に発行された村上さんの写真集『夏草の路』(サイン付き・4,000円)も販売されています。
この写真集を制作していた時期に、突然の入院・手術だったそうで、病室で進め、退院後に印刷立ち合いをしたとのこと。村上さんの地元である岡山・津山の風景が収められています。

この展示には、節目になった入院前後のできごとや感情を形に残しておきたいという村上さんの個人的な思いも込められているそうです。
村上さんの在廊日は本日7日(水)まで。ぜひ会場へ足を運び、見ているだけで外に出た気分になれる庭園の効能を感じると同時に、自分が生きることの意味を考えてみてはいかがでしょう。

【村上 雄大 写真展「WILD GARDEN」】
会期:2019年3月4日(月)〜3月17日(日)
13:00~19:00
会場:ギャラリー蒼穹舎
http://www.sokyusha.com/gallery/20190304_murakami.html

村上さんのWebサイト
http://murakamiyudai.com/