GOTO AKI 写真展「terra」

レポート / 2019年2月23日

~地球・大地の表情を多視点でとらえ表現した作品~

会場にてGOTO AKIさん。「風景写真の文化として確立している世界に、風穴を開けたい」とGOTOさん。自身の中で要素を削ぎ落としていくところに、言語化できない世界、スケール感の壊れた世界といった写真ならではの表現を作り出しているそうです。会場内で多くの方とコミュニケーションを図り、気さくに写真集へサインされる姿が印象的でした。

terraは地球・大地を指すラテン語。そのタイトル通り、照明を落とした空間に浮かび上がるように展示されている作品は、地球・大地の息づかいや胎動が聞こえてくる気がします。

会場入り口。かなり照明を落とした中は美術館のよう。宇宙空間の中で「terra」という惑星が見せるさまざまな表情を覗き込んでいるような不思議な感覚で作品を楽しめます。

GOTO AKIさんは、日本の自然から地球の表情をとらえた作品などを発表しているフォトグラファーです。撮影場所は国内の観光地や誰でも行くことのできる山々。しかしGOTOさんの描き出す世界は、観る人の風景に対する従来の先入観を壊し、地球・大地の広がりに気づかせてくれる力を感じます。その背景には、若い時の世界一周旅を通して地球のサイズ感を身体に刻み込み、またストリート写真で偶然性への感度を研ぎ澄ませてきたGOTOさんならではの経験や表現者としての信念があるからかもしれません。

正面の作品は、写真集未収録の「犬飼滝」(鹿児島)。この作品だけは身体で見て体感してほしいのだと、GOTOさん。静かな世界で滑らかな表情を見せる瀑布は必見です。

「地球は常に変化していて同じ一瞬はありません。山に入った時に見えてくる光や風、匂いなど、写真には映らない自然の表情を多視点でとらえ表現しています。写真は芸術の一つ。新しい価値観を提供することが、表現者としての意義だと考えています。作品を観た人の心に、無形の広がりが生まれると嬉しいです」と、GOTOさん。

会場奥のスペース。中央のチェアに座り、じっくり作品と対話できるようになっています。
サイズの大きい作品が多いので、離れてみたり、近寄って見たりと楽しんでみてください。

「写真展はナマモノです。この会場でしか得られないものがあります。ぜひ来場して体感してください」とGOTOさん。これからも、来場した人がまた来たいと思うような作品や表現を目指していきたいと、抱負を語ってくれました。

会場には、写真集『terra』(赤々舎2019年)に収録されている76点の中からセレクトされた42点と、写真集未収録の作品「犬飼滝」1点の、計43点が展示されています。
風景の中にある情緒や既視感を削って削ってたどり着いたという地球の表情が気になる方は、ぜひ会場へ足をお運びください。

奥から、初写真集『LAND ESCAPES』(2012年)、『LAND ESCAPES -FACE-』(2015年)、最新の写真集『terra』(2019年)。
『terra』の中には、わざと風景写真を始めた2002年に撮影されたカット2点を収録していると、GOTOさん。時間の厚みが伝わればと、話してくれました。

GOTOさんは来場者とのコミュニケーションも表現の一つだと考えているそうで、会期終了までの残り約10日はほぼ全日在廊しているそうです。
※下記日程はCP+のキヤノンブースに登壇するため不在
2/27(水)終日、2/28(木)終日、3/1(金)14:30以降

【GOTO AKI 写真展「terra」】
会期:2019年1月19日(土)~3月4日(月)
10:00~17:30
会場:キヤノンギャラリーS(休廊日:日曜日・祝日)
https://cweb.canon.jp/gallery/s/

GOTO AKIさんのWebサイト
http://www.gotoaki.com/