京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク 2階展示室にて、2025年7月29日(火)から8月8日(金)まで、夏樹螢石 写真展『蜻蛉の国』を開催します。
「蜻蛉(あきつ)」という言葉は、あまり聞き染みがないかもしれませんが、「トンボ」と聞けば、多くの方がその生き物の姿を思い浮かべると思います。
今回の写真展では、そんな蜻蛉(あきつ)の魅力を捉えた作品を68点展示しています。
さらに、映像による記録もあわせてご覧いただけます。
今回の写真展を開催するにあたりどのように撮影されたのか、そして写真展に込められた思いについても、夏樹さんにお話を伺いました。

Q. 「蜻蛉」に焦点を当てた理由を教えて下さい。
もともと「トンボが好き」という思いもありますが、近年数が減ってきているという現状があって。その原因の多くが人間の活動によるものなんですよね。
だからこそ、まずは「トンボってどんな生き物なのか」を知っていただき、そこから少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいなと思い、今回取り上げることにしました。

Q.そもそもトンボは、どのような昆虫なのでしょうか?人との関わりも含めて教えてください。
水辺を中心に、様々な場所で見ることができるとても身近な昆虫です。肉食性が強く病原菌を媒介する蚊など、人間にとって有害な虫を捕食してくれるので、害虫の発生を抑えてくれている面があります。
なのでトンボの数が減ってしまえば、そのぶん害虫が増える可能性が上がることになります。

Q. 「蜻蛉の国」には、どのような思いを込められましたか?
「蜻蛉の国」というタイトルで展示をするのは今回で2回目です。伝えたいのはトンボという存在を忘れずにいてほしいということ。
もっと多くの人に認識されてほしいということ。そして、トンボが生きていける環境――つまり、私たちの身のまわりの自然や水辺の場所を、改めて見つめ直してほしいという思いを込めて「蜻蛉の国」というタイトルをつけました。


Q.撮影の際に使用しているカメラを教えて下さい。
OMSYSTEMのOM-1をメインに、レンズはマクロレンズ、望遠レンズなど、ズームレンズを中心に使用しています。


Q.撮影する際に気をつけていることは?
写真という観点で言えば「何を撮影しているのか」「どのような状況なのか」「どんな環境にいるのか」を明確に写し、しっかりと伝わるように意識して撮影しています。
カメラの設定で言うと、被写体の魅力が一番引き立つような設定で、例えば、被写体がくっきり写るよう絞り気味で撮影したり、動きの表現がよく分かるようSSを調整するなどして撮影に望んでいます。
また、撮影する際には、その場所の自然環境を壊さないようにすること、被写体に過度なプレッシャーを与えないこと、そして近隣の住民の方々への配慮も大切にしています。 そうしたバランスを考えながら、丁寧に向き合うようにしています。

Q.近隣住民の方から教えていただく情報もあるのでしょうか。
結構ありますね、何度も通っているうちに仲良くなって撮りやすくなったりもあります(笑)
Q.撮影地はどこでしょうか?
今回の作品では、関西圏で身近に観察できるトンボたちを中心に撮影していますが、それだけではありません。遠征をして、その土地特有の昆虫も撮影しています。

しかし近年では生息域を北へ広げており、滋賀県でも確認されています。
Q当館で展示する際のこだわりはありますか?
今回の展示は、順路に沿ってご覧いただくことで、1年の巡りを感じていただける歳時記的な構成となっています。 また、撮影地の多くは滋賀県ということで、身近な場所にこれほど多くのトンボが生息していることを感じ取ってほしいと思います。

Q.どのような方々に見ていただきたいですか?
昆虫が好きな方はもちろんですが、あまり興味のない方にも、ふらっと立ち寄っていただき、この展示をきっかけに興味を持ってもらえたら嬉しいです。
写真を見て、「実際に外に出て昆虫を観察してみよう」と思っていただけたらと思いますし、ぜひ子どもたちにも見てもらいたいですね。
Q.過去のインタビューでは『今後も今通っている撮影フィールドに赴き、これからも生き物たちの営みを記録し続けたいと思っています。』とお話されていましたが、そのお気持ちに変わりはありませんか?
変わりません。
また今後は写真とともに、昆虫の種類や見られた場所などのデータも撮りながら、私の撮った作品が環境を守るために役立ってほしいという思いもあります。
そして昆虫の動きなどを写真だけではなく映像でも記録していきたいと考えています。

statement
人と蜻蛉はともにあった。
古に、国のかたちを蜻蛉に見立てたその日から、人はこの国を『蜻蛉(あきつ)の国(くに)』と呼んだ。
古に、人を刺した虻を蜻蛉が食んだその日から、人は蜻蛉を『勝虫』と貴んだ。
人と蜻蛉はともにあった。
人が田に水を引き、蜻蛉は命を育んだ。
人に仇なすものたちを、蜻蛉はせっせとついばんだ。
人は蜻蛉を失うだろう。
便利になった世の中で、蜻蛉の棲み処は壊される。人には無用と壊される。
贅沢ばかりの世の中で、蜻蛉は毒に侵される。人の豊かさに殺される。
立ち止まり、水辺を見よ。そこに住まう、宝石を見よ。
立ち止まり、水辺を見よ。『蜻蛉の国』を壊さぬために。

【夏樹螢石 写真展『蜻蛉の国』】
会場:京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク 2階
〒605-0038 京都市東山区堀池町374-2
会期:2025年7月29日(火)〜8月8日(金) 11:00-18:00
無休/入場無料
URL:https://kyoto-muse.jp/exhibition/184621
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