~ 魅惑の都市《香港》 ~
コの字型の黒を基調としたギャラリーに並ぶのは、香港のネオン街や雑多な街並みを写したカラー作品約35点です。写真家のクキモトノリコさんは、ウォン・カーウァイ監督の映画作品『恋する惑星』『天使の涙』の映像をイメージしながら撮影したのだと言います。
「私がもともと香港に対して持っていたイメージは『恋する惑星』『天使の涙』の2つの映画。その中に描かれている香港独特のゴチャッとした空気感を写真で表現したいと考えました。香港って、アジア独特のギラギラしたエネルギーを感じさせる風景に溢れているんですよね」
昼のように街を明るく照らすネオン、ビニールシートで覆われた工事中の建物、薄汚れた店。どこか危険な雰囲気を感じさせる街並みは、イギリスの植民地下に置かれていた時代に制作された2つの香港映画の世界そのもの。
香港が中国に返還されて20年が経ち、以前のようなエネルギーで溢れた雰囲気を醸し出す場所は少なくなりましたが、それでもなお街中に残る「香港らしさ」を探して撮影したのだそうです。
注目したいのが、動きのある人や乗り物を撮影した作品の中に、いくつか被写体や風景がブレた作品がある点です。これはクキモトさんが考える「スピード感」を表現しているのだとか。
「意識したのはスピード感。映画の中に登場人物が走るシーンがあるのですが、その動きやスピード感を写真作品でも表現したくて、シャッタースピードを遅くし、あえて手持ちカメラでブレを意識して撮影しました。ブレが写真にスピード感を生み、躍動的な作品になったと思います」
また、額装をせずにプリント作品を直にクリップに挟んだ状態で展示しているのも特徴です。フレームに収めないことで、香港独特の雑然とした雰囲気やギラギラとしたエネルギーがより強調されています。
現代に残る香港のエネルギーを感じてみたい方は、ぜひ会場へ足をお運びください。
【クキモト ノリコ 写真展「恋する天使と涙の惑星」】
会期:2017年9月15日(金)~9月28日(木)
10:00~18:00(日曜・祝日休館)
会場:オリンパスギャラリー大阪
https://fotopus.com/showroom/index/detail/c/628/