佐藤 圭司 写真展「忍路の景色」

レポート / 2017年10月4日

冬の日本海を写した、重く切ない忍路の情景!

忍路(おしょろ)は、北海道の小樽と余市の間にある小さな半島で、アイヌ語の「オショロッコ」に由来します。忍路半島の小樽側にある忍路湾は、「お尻のようなくぼみ」の意のとおり、お尻のような緩やかな曲線が特徴です。
北海道の日本海側の厳しい冬の景色に魅せられた写真家の佐藤圭司さん。張碓(はりうす)の撮影で訪れた際に忍路を知り、興味を持ったそう。昨夏にロケハンをして、12月から毎月通って冬の景色を撮ったといいます。

写真展「忍路の景色」をまとめた写真集を手に、佐藤さん。穏やかな話し方に引き込まれつつ、最後にメッセージを伺うと、「ぜひ写真集を買ってください!」とのこと。背後の展示作品(左から3枚目)が表紙に使われています。

「冬の日本海側の厳しい感じを表現したいと思いました。この地域はかつてニシン漁で栄えていましたが、近年は漁港も寂れ、冬には建物自体が凍りついている。人も歩いていない吹雪の中を、トレッキングシューズにレッグカバー、革手袋を身に付けて、穴をあけたジップロックでカバーした手持ちのカメラで撮影します。レンズには雪が積もり、手の水蒸気で結露する。そうした冬の厳しさが表現できたと思います」

会場はRED Photo Gallery(2階)とPlace M(3階)の2フロアを使い、42点の作品が展示されています。暗い青と白で構成された作品には、レンズに積もった雪や結露が影となって写っているものもあり、冬の日本海の厳しさそのものです。
佐藤さんが歩きながら撮影した忍路湾沿いには、国道5号線が走ります。この場所は崩落などを繰り返していて、新しい道・新忍路トンネルの工事が進められています。つまり今後は忍路湾沿いの景色を見られなくなるかもしれないのだそう。

雪に閉ざされた忍路の町や海などを写した作品が並びます。

見ていると写真の奥へ引き込まれそうな印象を受ける作品。曇りの日や吹雪の日、初冬や厳冬から初春までさまざまな忍路の姿があります。

これまでに出版した写真集の見本も置いています。右手前の写真集が今回の新作「忍路の景色」。

「不思議な巡り合わせで歴史の端境期の風景に出会えました。僕が目にしたものをそのまま記録して、展示しています。小樽ではなく『忍路』と題することで、先入観のないニュートラルな状態で写真を見てほしかった。冬の初めと終わりで異なる空気感や、天候の違いなどを感じていただけると嬉しいです」

トラブル続きの厳しい撮影のなか、自分が納得できるまで通い、忍路の景色をおさめたのだと、佐藤さんは教えてくれました。今後はタイの夜景、東京の景色の展示をする予定だそうです。
冬の海や無人の道に深々と降り積もる、雪影の重く切ない情景が気になる方は、ぜひ会場へ足をお運びください。

【佐藤 圭司 写真展「忍路の景色」】
会期:2017年10月2日(月)〜10月15日(日)
12:00~19:00
会場:RED Photo Gallery / Place M
http://photogallery.red/schedu…/2017/20171002/exhibition.php
http://www.placem.com/schedule/2017/20171002/171002.html