オリジナルプリント展「原 直久 時の遺産」

レポート / 2018年10月26日

8×10によるオリジナルプリントが魅せる40年の軌跡

芸術資料館にて。自身を裏通りの写真家と称する原さん、作品についても「8×10で撮るスナップショット」と話すように、写っているのは自然や都市の建物とそこに暮らす人々の姿です。「撮る場所を決めたら、セットしてタイミングを待つだけ。8×10は“待ちの芸術”です」とのこと。

原 直久さんは、8×10インチの大判カメラを用いてヨーロッパやアジアの都市と自然とのかかわりを写した「時の遺産」シリーズなどで知られる写真家です。2017年には台湾の国立歴史博物館にて回顧展が行われ、160点が展示されました。
今回の展示は、千葉・九十九里浜海岸を捉えた初期の「蜃気楼」シリーズも含めた約40年にわたる原さんの軌跡が結集した作品展です。芸術資料館にてモノクロ約45点とカラー数点、写真ギャラリーにてカラー約20点のオリジナルプリントを観ることができます。

「都市と自然のかかわりを、一生に一つのテーマと定めて撮ってきました。ここに展示しているのはその一部ではありますが、こうやって改めて見ると、よくやったなと思います。派手な作品ではありませんが、じっくり見て、充実感を味わっていただければ嬉しいです」

会場には暗室作業の流れを紹介する映像もあり、デジタルが主流の時代に暗室作業が分かるようにという教育機関ならではの粋な計らいも感じられます。

芸術資料館内の様子。中央に、暗室作業を紹介する映像が流れています。蜃気楼シリーズ、時の遺産シリーズ(パリ、イタリア、ヴェネチア、スペイン、韓国、上海など)より、オリジナルプリントが並びます。「制約のない展示ができたことを嬉しく思っています」と、原さん。

今後の展望について「昨年、日本大学を定年退職して時間ができました。これまでに撮りためた1万4千枚以上のフィルムの整理をしつつ、日本国内で新しいテーマに挑戦したいと思います」と話す原さん。

11月2日〜4日の芸術祭期間は毎日在廊し、授業のある日もなるべく顔を出すようにされているとのことです。
プラチナプリントによる豊かな階調と、8×10の精緻な世界観に興味のある方は、ぜひ会場へ足をお運びください。

会場が広いので分かりにくいのですが、1点1点のサイズが大きく、細部までじっくり観ることができます。会場前の廊下にも大きな作品があり、見応えがあります。「自身の作品づくりに集中しすぎて、大学での授業をおろそかにしているとは言われたくありませんでしたので、どちらも真剣にやってきました」と、原さんは信念を語ってくれました。

別棟にある写真ギャラリーの入口。こちらはカラー作品約20点が並びます。

1970年代から2010年代までの「時の遺産」シリーズより、カラー作品。ゼラチンシルバープリントやプラチナプリントとはまた違った魅力があり、引き込まれます。

【オリジナルプリント展「原 直久 時の遺産」】
会期:2018年10月9日(火)~11月9日(金)
9:30~16:30(土曜は正午まで、日曜休館)
会場:日本大学芸術学部 芸術資料館/写真ギャラリー
※入館の際は守衛室にてビジター受付が必要です。
※11月2日(金)~4日(日)の学部祭期間中は開館しています。
https://www.nuaphoto.com/i/20181009_01