~ 自然から集めた光を写し込む ~
ピンホール写真家として20年以上作品づくりをしてきた林敏弘さん。初めて自作のピンホールカメラで地元の港をテスト撮影したとき、時間や空気や風や音までが再現されているのを見てゾクゾクする衝撃を受けたと言います。
気持ち良い秋の夕暮れ、風に流れる柔らかい光と雲、ゆらゆらと揺らめく係留中のボート…そこには何度もレンズカメラで撮ってきた景色とは全く違う世界が広がっていたのだと教えてくれました。
「レンズカメラが時間を切り取るものだとすると、ピンホールカメラは自然から光をいただいて集めるもの。だからこそ時間の流れが写ります。一枚を撮るのに時間はかかりますが、その分、被写体と対話することができる。ピンホールで初めて撮った一枚が、私の人生を変えました」
ピンホール写真に出会ったからこれまで写真を撮り続けることができ、写真があったからこそ様々な人と出会うことができたと、林さん。写真は写真家自身の存在や気持ちを投影するためのもので、個展は自分の作品と対話する場所なのだそう。そのため作品づくりで心がけているのは、見ていて飽きない作品、10年20年経っても好きな作品であることです。
フィルムや印画紙の生産減により今後はデジタルに移行し、ロケーションを変えて新たなピンホール作品づくりを模索していきたいと展望を語ってくれました。
会場では、20年の集大成として出版した写真集『風と光の記憶』の中から40点の作品をセレクトして展示販売しています。モノクロフィルムで撮られたピンホール作品の前に立つと、自分はこんなに柔らかい光に包まれた世界で生きているのかと、温かく穏やかな心になる気がします。
展示期間中、林さんは毎日在廊しているそうなので、ぜひ会場へ足をお運びください。
【林 敏弘 写真展「風と光の記憶 モノクローム・ピンホール写真」】
会期:2018年11月5日(月)~11月17日(土)
10:30~18:30(最終日は17:00まで)
会場:Art Gallery M84
http://artgallery-m84.com/?p=5407
林敏弘さんのWebサイト
http://www.toshi-photo.com/