saorin 写真展「walk around with him」

レポート / 2019年3月20日

~平凡で幸福な、愛犬との14年7カ月~

会場にて、saorinさん。「親バカ写真展ですが…」と遠慮がちに作品について話してくれました。
展示期間中、会場ではレイヤードフォトパネルのワークショップなど、写真をカタチに残す企画も開催されるそうです。撮って楽しむだけでなく、カタチにして眺めることで、普段は気づかない何かに触れることができると良いですよね。

写真企画室ホトリは、浅草橋駅から徒歩5分ほどにある築50年の木造ガレージをリノベーションしたアトリエギャラリーです。写真展をはじめ、写真教室や写真雑貨のワークショップなどが行われています。

会場の様子。大きめの作品が少ないと、急きょプリントしたそうです。
ミニチュアダックスのつぶらな瞳にキュンとします。

現在展示しているのは、ホトリの室長でもある写真家saorinさんによる愛犬アビの追悼展。「私的な展示なので…」と前置きされつつ入った会場には、何気ない日常生活の中に存在するキラキラした瞬間が広がっていました。
saorinさんはこれまで、山や旅先あるいは日常の中で心に引っかかった瞬間を撮影した作品を発表してきました。今回の愛犬フォトも根っこは同じ。14年と7カ月。共に過ごした日々を振り返る写真には、河原の土手を散歩しながら感じる季節の移ろいや、家族と寄り添って寝る穏やかな時間など、平凡な日々のなかにある幸せがありました。

入口からすぐの土間の壁には、100枚以上の写真がランダムに貼られています。決めポーズはなく、普通に過ぎていく日々の様子が収められています。愛犬の写真だけでなく、草や空や花など、さまざまな要素が展示されていて、季節の移ろいを感じさせます。入口から奥に向けて、夏・秋・冬・春の順だそう。

海辺で遊ぶ愛犬アビの姿。アニマルコミュニケーションでの、saorinさんの質問と愛犬のことばが、吹き出しのように展示。写真を見ながら14年7カ月の出来事を少しずつ反芻している姿が浮かびます。

「写真を撮っていても忘れていることがあります。仔犬の頃は写真のバリエーションが豊かだなとか、こんなこともあったなとか、思い返す機会になりました。また、アビと過ごした14年7カ月は、デジタルカメラの激動期でもありました。コンデジ、iPhone、ミラーレスなどの変遷が、そのまま作品に反映されています(笑)」

様々な手法でプリントされた100点以上の作品は、フィルムのような粗めの粒子や少し褪せた色彩が良い味を出しています。「自分が見たかったから」と、saorinさん。作品として意識しない構図やシーンの連続だからこそ、私たちが平凡と思っている日常がいかに幸せな日々の積み重ねなのかを実感させられます。
ぜひ会場へ足を運び、saorinさんの作品を見ながら、何気なく過ごしている日々の中にある幸せな瞬間を思い返してみてはいかがでしょう。

会場内では、saorinさんの著書が展示販売されているほか、レイヤードコラージュフォトパネルの展示販売もされています。写真を撮る楽しみから、写真をカタチに残す楽しみまで、様々な楽しみ方があるのがわかります。写真下左から『写真でつくる雑貨』『写真と古道具のくらし』『フォトブックレシピ』『たいせつなものを撮ろう、残そう』『写真を楽しむ133のネタ帖』。

会場には、糸がかりの手法でつくった写真集も。

【saorin 写真展「walk around with him」】
会期:2019年3月16日(土)~3月29日(金)
※3月22日(金)~24日(日)は閉廊
13:00~19:00(最終日は17:00まで)
会場:写真企画室ホトリ
http://fotori.net/?p=19339