淵之上 明日香 写真展「Roundabout」

レポート / 2019年2月27日

~人間関係の中で生じる自分と他者の違いを可視化した作品~

今回の展示では、作品を自分が作ったカテゴリに振り分けていったそう。その一つが「連続性」。何かが続いていく様子から、切っても切れない人間関係へと発想を広げ、そこに生まれる感情などを可視化したものを展示しているのだと、教えてくれました。

造形表現の学びの一環で一眼レフを使ったことが写真の道に進むきっかけだと、写真家の淵之上明日香さん。構図や光の調整によって概念以外のものが伝わる瞬間が面白く、心のイメージを可視化する作品づくりを意識しているそうです。
会場には、私たちが人間関係の中で感じている楽しさや辛さ、あるいは理不尽さや閉塞感、孤独感といった感情の違いを、監視カメラ的な別視点でとらえた作品20点が展示されています。

「今は綺麗な写真は簡単に撮ることのできる中で、それ以外の隠れている面白さや、自分が感じたことをファインダーで可視化していきたいです」と、淵之上さん。 淵之上さんは、撮った中からセレクトし、なぜ自分がその作品を選んだのかを突き詰めて考えるタイプだそうです。その一環で、作品につけられた各タイトルが秀逸。想像力を掻き立てると同時に、観る側が自由に感じていいんだということを示唆しているよう。

「昨夏に発表した『ささやきあう』という作品をきっかけに、人間関係や私と他者との違いについて考えるようになりました。Roundabout(迂回)とは、私のまわりを他者が迂回するイメージです。都会には多くの人がいますが、人々の感情が見えてこないのは、自分と他者は違う人間だから。忙しそうに見えてそうじゃないかもしれない、制限を受けているように見えて実は自由なのかもしれないなど。私が可視化したイメージを見た方の中に新しい感情が生まれると嬉しいです」

作品タイトルは、手前から「パーソナルスペース」「コンプレックス」。都会で生きる人々の不自由さや息苦しさを彷彿とさせる一方で、「それは私が感じているイメージであって、見る人によってはポジティブなイメージを持つかもしれません。見た人それぞれが感じた答えを大切にしたい」と、淵之上さんは話してくれました。

期限付助教として研究・教育に携わっている淵之上さんにとって、作品展示は研究成果報告の一環。今回の展示を通して学んだことをアウトプットするために継続的に展示をしていきたいと、抱負を語ってくれました。
淵之上さんは、2月27日(水)以外は全日在廊されているそうです。ぜひ会場へ足を運び、作品から感じた皆さんのイメージや感情について語り合ってはいかがでしょうか。

【淵之上 明日香 写真展「Roundabout」】
会期:2019年2月26日(火)~3月3日(日)
12:00~18:30(最終日は17:00まで)
会場:Gallery美の舎
http://binosha.jp/