青木渡 写真展「二間間口の相貌」

青木渡 写真展「二間間口の相貌」
青木 渡
2024/04/02 ~ 2024/04/14
ギャラリー ヨクト

「二間間口の相貌」(にけんまぐちのそうぼう)

 設計者の信念がどのようにその建築に表現させているか自分なりに思考をめぐらせていた。対象は時代を代表する歴史的建築物から新進気鋭の建築家の作品に至るまでジャンルは問わない。それぞれに追求された機能美、時代を反映したファサードに隔たりはないと思っている。

 街を歩くと見慣れた都市の風景が展開する。うすうす感じる。著名な建築以外に興味が向いていないのではないか。建築はその時代の人々の生活の営みを反映した結晶とも言い換えることができる。だとしたら、一番大切な何かを見逃してはいないか。

 数年前、ポーランドのイラストレーター(マティウシュ・ウルバノヴィッチ)の作品集に出会った。彼は日本人が何の興味を感じない街の風景に「インスピレーションの爆発を引き起こす光景」だと言った。なるほど掲載されたイラストは本来私たちが何気なく見過ごす小さな店舗のファーサードを軽快で優しいタッチで表現している。ある意味、フィルターを通過したその絵は私の建築大好き思考の琴線に微かな傷を残した。だが、その時はまだ、それが建築に対する思考の狭さだと気づくことができなかった。

 ふとある日、街の何気なく見過ごされる建物を写真表現できないかと思いついた。まずは店主に挨拶をする。ファインダー越しに見る店舗のファサードと快くうなづいてくれた店主の表情が重なり、勝手だが人差し指に少し責任を感じながらシャッターを切る。有名建築家がデザインしたものではないはずだ。だが、十分自分の心情を満たしてくれる。そのファーサードのデザインに現れている店主の思い、宿っている質素さ、風雨による経年劣化による趣が要因だろうか。

 今までの偏った視点は何だったのか。見過ごす罪の重さを痛感した。鉄筋コンクリートのビルが建ち並ぶ東京の片隅に名もない建築が健気に息づいていた。今、かろうじて目を向けることができた。ギリギリだった。少なくても近い将来、この時代を反映したこれらの建築を見ることができなくなるからだ。

 
 ※日本の建築は909mmを基本モジュールとして構成されています。材料を規格化して効率を図るためです。この基本モジュールを半間(はんげん)といいます。ですから二間(にけん)はその4倍の3636mmになります。このテーマでは狭い敷地という意味で用いています。

 


 

青木渡 写真展「二間間口の相貌」
会期:2024年4月2日(火)~4月14日(日)
   13:00~19:00
   月曜日休み
会場:ギャラリーヨクト(http://yocto102.starfree.jp/
   〒160-0004 東京都新宿区四谷4-10 ユニヴェールビル102
   TEL:03-6380-1666
   東京都メトロ丸の内線「四谷三丁目」駅2番出口から徒歩5分

公式サイト 掲載ページはこちら