藤田一咲 写真展「旅するマネキン師」

藤田一咲 写真展「旅するマネキン師」
藤田 一咲
2024/12/10 ~ 2024/12/22
京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク

京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク 2階展示室にて、2024年12月10日(火)から12月22日(日)まで、藤田一咲 写真展「旅するマネキン師  Les Voyages de  Monsieur Mannequin」を開催します。


マネキン師はマネキンたちと一緒に暮らし、各地をチンドン屋、手品師、アイス売りなどをしながら転々と旅する様子をドキュメンタリータッチをベースに捉えまとめたもの。だがもちろん、マネキン師という職業や呼称は存在しない。「マネキン師」とは私が考え出した架空の職業と、肩書きを持つある男の物語だ。

マネキンを死者、あるいは単に物体と見ることで、生者であるマネキン師と比較し、生と死、時間、有と無、美と醜、事実と虚構、真実と虚偽、現実と幻想、意味、愛、夢、現在と追憶、存在、自由などについて想いを馳せることもできる。

だが私がこの作品に込めたものは、フィルム時代の写真史に名を残す先人への憧憬や尊敬、感謝の気持ちだ。そこには私の敬愛する写真家たちのスタイルのあからさまな踏襲も含まれている。フィルムがデジタルに置き換わって久しいが、私にはフィルム時代の持つ写真の人間臭さが身に染みているのだ。あの古き良き時代の写真の感覚を懐かしみ、楽しみたいという老人の懐古趣味、写真遊びなのだ。とはいえ、私は伝統的な手法で昔話をするつもりはない。撮影はデジタルであり、カラーグレーディングなど現代的な手法もふんだんに施してある。ただし、AIや合成はない。(私は旧世界の心の持ち主であり、現代の表現技術を楽しめることが心から嬉しい)。

マネキン師は半世紀前の写真用語で言えば「演出写真」だ。演出写真に対しては、この用語が広く使われ始めたと同時に「写真は真実を写すものであり非演出であるべき」という批判が根強くあり、それは今日の写真を見る人、撮る人にも少なくない。マネキン師はそういう人たちへの、写真表現についてのさまざまな問いかけをも込めてもいる。それもマネキン師の語る物語のひとつなのである。


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