渡部敏哉「Beyond what you see」

渡部敏哉「Beyond what you see」
渡部 敏哉
2024/10/24 ~ 2024/11/11
book obscura

渡部敏哉さんの2冊目の写真集『Beyond what you see(IBASHO/The (M)éditions)』の刊行を記念して写真展を開催致します。
本展示では写真集に掲載された作品10枚を展示販売し、写真集も同時に発売致します。

 


 
このモノクロシリーズは、2015年頃から始めたもので、日常の中に潜む非日常のイメージをモノクロームで表現しています。そのきっかけとなったのは、2011年3月11日の原発事故で、私の故郷が人の住めない場所になった強烈な経験からでした。

2011年、私は立ち入りが禁止された故郷の風景を撮影し始めました。そこには、誰も住めなくなった町(非日常)があり、その変わりゆく様子を、自分の記憶に残る日常の風景と重ねて撮影しています。この記録は「Thereafter」としてまとめられ、STEIDLより写真集として刊行される予定です。

私の最初のモノクロシリーズ「Somewhere not Here」は、「Thereafter」と対を成す作品として発表されました。このシリーズでは、「自分の意識の奥底にあるイメージを写真で掬い上げること」をテーマに制作を続けてきましたが、制作を重ねるうちに表現が変化していきました。記憶の曖昧さや変容の視覚化、生と死、「間」という概念、詩のような余韻、ゲシュタルト崩壊など、さまざまな要素が作品に含まれるようになってきています。

新たなシリーズ「beyond what you see」では、それらの要素に加えて、鑑賞者が自身の記憶や感情を呼び起こし、作品と共鳴するような表現を意識しています。「安らぎ」と「不安」、「美しさ」と「恐れ」など、単一の感情ではなく、複数の感情が交錯する作品を目指しています。

私は遠くへ撮影に出かけることはあまりなく、普段の生活の中で出会った風景を撮影することが多いです。撮影後は、半年から1年ほど時間を置いて写真を見返すようにしています。そうすることで、撮影時の感情や記憶が少し曖昧になった状態で、自分の内面と響き合う画像を探し出します。時には2年、5年といった時間を経て過去の写真と向き合うことで、新たな発見が得られることもあります。

 


 

■開催情報
渡部敏哉「Beyond what you see 瞳に映るものの向こうに」
会 期:2024年10月24日(木) – 2024年11月11日(月)
    12:00~19:00
会 場:book obscura(東京都)
定休日:火曜日・水曜日

 
■書籍概要
Beyond What You See/渡部敏哉
出版社:IBASHO/The (M)éditions
判 型:28×20.3cm
仕 様:ソフトカバー
部 数:400部
価 格:16,500円(税込)

 
公式サイト掲載ページはこちら

 


 

作家プロフィール
渡部敏哉|Toshiya Watanabe
1966年福島県生まれ。多摩美術大学在学中にPARCOが主催する「期待される若手写真家20人展」に選出される。福島第一原子力発電所事故の影響で警戒区域に指定された故郷、福島県浪江町を記録した一連の作品はLe Monde(仏)、THE BIG ISSUE(台湾)など海外メディアでも数多く紹介され大きな反響を呼んだ。2016年STEIDL BOOK AWARD JAPANを他の7名の写真家と共に受賞、2019年Hariban Award 審査員特別賞受賞(Martijn van Pieterson & Annemarie Zethof選)個展に「18 months」、「THROUGH THE FROZEN WINDOW」(いずれもPOETIC SCAPE)がある。
2021年に初の写真集「Somewhere not Here」が the (M)éditions(フランス)とIBASHO(ベルギー)の共同出版により刊行された。現在、個展「Beyond what you see」をIBASHO gallery(ベルギー)で開催中。