水池葉子 写真展「のら」

水池葉子 写真展「のら」
水池 葉子
2025/03/18 ~ 2025/03/23
京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク

京都写真美術館 ギャラリー・ジャパネスク 2階展示室にて、2025年3月18日(火)から3月23日(日)まで、水池葉子 写真展「のら」を開催します。
※最終日は17:00まで


それは、ただのゴミなのかもしれません。
路傍にぽつりと置かれたモノたちを「のら」と名付け、撮影・収集しています。

目的があって生産され、与えられた場所で務めを果たしていたはずの「のら」が、人の手を介してここに至るまでの道程、そしてまた人の手を介して続いていくこれからの行く末…彼らが手にするのは「自由」?「孤独」?それとも?

収集のきっかけは、単なる好奇心でした。
ただの落とし物に「のら○○」と名付けることで人格の様なものが宿ること、さらにぽつんと佇むその姿に「のら」の人生ドラマを想像させられてしまうことが面白く、これまで撮影を続けてきました。

しかし、収集が進めば進むほど、なぜこんなにも「のら」に惹かれるのだろうかという疑問を抱くようになりました。そして彼らに感じる人生ドラマのように自分の人生を振り返った時、私は「のら」に自分の姿を投影しているのだという事に気づかされたのです。

私の人生の多くは旅でした。
その旅は夫の海外転勤に帯同する形のもので、自分の意思で始めるものではありませんでした。
それまでの仕事や人間関係から突然切り離され、ストリートビューの黄色い人のように知らない街にぽいっと放り出されてしまう、そんな私の前に現れた「のら」。
その姿は、あるべき場所や与えられた役割から切り離されて、自由を謳歌しているようにも、寄る辺の無い孤独に震えているようにも見え、私に「アイデンティティの拠り所とは何か」という興味深い問いを投げかけてきたのです。

路傍に佇む「のら」。
それは現代の私達の姿なのかもしれません。


この写真展が「のら」の面白さを伝えるとともに、彼らの来し方行く末に思いを馳せ、「自分を自分たらしめるものは何か」を考えるきっかけとなることを願っています。

さらに、2024年に発売した同タイトルの写真集も販売いたします。
「のら」の魅力をより楽しんでいただければ幸いです。

 

作品写真:クリックで拡大