岐阜県下呂市馬瀬西村ほか
産業編集センター 出版部
2024/10/14 ~ 2024/11/15
岐阜県下呂市馬瀬西村ほか
【旅ブックスONLINE 写真紀行】
産業編集センター出版部が刊行する写真紀行各シリーズの取材で訪れた、全国津々浦々の風景を紹介しています。
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清流を抱いた静かなる癒しの村
県の中央部、東を飛驒山脈、西を白山連峰に囲まれたところに下呂市馬瀬地区(旧馬瀬村)がある。南北に流れる馬瀬川に沿って細長く伸びており、南北に28キロメートル、幅4キロメートルという実に小さな区域である。その中に、江戸時代から
続く十の集落があり、約四百戸の民家が点在している。馬瀬という地名は、この地域が馬の背のように細長いことから付けられたといわれている。
緑豊かな自然以外には、とりたてて特徴のない地域だが、逆に手つかずに残る山村や里山の姿が、近年は得難い風景として多くの人々の心を摑んでいる。なにより、地域の真ん中を流れる馬瀬川が魅力的だ。清流としても知られ、その透き通った薄緑の川の流れは、見ているだけで心が癒やされていく。
馬瀬川は、鮎釣りのメッカとしても人気を集めている。地元の人々は馬瀬川の様子を「馬瀬七里十里五十淵」と言い表す。里(集落)を縫う流れにいくつもの淵が連続している様を言ったものだ。こうした淵は渓流魚の格好のすみかになるという。この鮎を目当てに、毎年渓流釣りのシーズンともなれば5万人以上の太公望たちが馬瀬川にやってくる。いつもは静かで鄙びた集落が、お祭りのようににぎわう時季だ。
しかも、馬瀬川の鮎は美味であることが広く知られている。身が柔らかく香りが強く、かつては日本一うまいという称号を獲得したこともあるほどだ。これは、馬瀬川流域に石灰岩が多いことが原因で、石灰岩に良質な鮎の餌が生え、カルシウムが溶け出した川が甘くなることで、鮎も美味しくなるらしい。
馬瀬川に沿うように南北に県道が走る。南から北へと車を走らせ、馬瀬西村、馬瀬惣島、馬瀬井谷といった集落を過ぎ、馬瀬名丸あたりで国道257号に入って南下すれば、やがて下呂温泉にたどり着く。
下呂温泉といえば、有馬、草津とともに日本三名泉のひとつとされる名泉。その温泉街からは馬瀬は、車で10分程度で訪れることができる。温泉で身体を癒やし、ちょっと足を伸ばして馬瀬川の鮎釣りを楽しみ、馬瀬の自然で心を溶かすーそんな旅もいいかもしれない。
ちなみに渓流釣りの解禁は毎年2月下旬、4月下旬からが本格的なシーズンとなる。
※『ふるさと再発見の旅 東海北陸』産業編集センター/編より抜粋