銀城アトム写真展「遠行希」

銀城アトム写真展「遠行希」
銀城 アトム
2025/03/04 ~ 2025/03/16
Jam Photo Gallery

作家ステートメント

その当時、暇があるとよく旅行をしていた。何故旅行するのか?様々な理由はあったが、考える気になれなかった。何だか難しい問題が沢山身の上に降りかかっているようで、まともに考えるには恐ろしい気がしたからだ。

旅行しながら写真を撮り歩いた。車窓から、迷いながら歩く街で、人込みの中で、出鱈目にシャッターを切った。
シャルルヴィルーメジエールを旅行した時、ランボー博物館へ行った。小さな館内を見た後、受付でランボーの詩集を数冊買った。

ランボーの生まれ育った家を外から見て、彼の通ったという学校、そして彼の眠っている墓地へと行った。シャルルヴィルーメジエールへ来た目的は、それで全部終わってしまった。丁度お昼時で、ワインを飲みながら昼食を取った。無目的に街をさ迷い歩き、ムーズ川のほとりに出た。ベンチを見つけ、横になった。博物館で買ったランボーの詩集を取りだし、適当にページを開いた。

「遠くへ行きたい、果てしなく遠くへ…」

その一文を読んだ時、自分の身を思わずにいられなかった。苦笑いが出た。「遠行希」というタイトルは、この時生まれた。

 


 

ギャラリーコメント

Jam Photo Galleryでは約2年振りとなる銀城アトム写真展。パリ在住中に旅をしながら撮影した、オリジナルプリントを展示いたします。

妻・康子さんから預かったストレージボックスを開けると、手書きのフランス語が書いてある台紙が入っていました。私は直ぐにそれをスマホで撮影し、フランスに住む幼馴染にメッセージと共にその画像を送り、正確なスペルと意味を聞くことにしました。ステートメントを読んでいたので、ランボーの詩の一節だとは想像がついていました。

「j’ai toujours un espoir dans mon coeur, aller au loin , très loin」

丁度彼女の娘が受けたフランス語の試験でランボーの詩が題材になったそうで、面白いタイミングだと思いました。直訳すると「私はいつも心の中に希望を抱いている。遠くへ、さらに遠くへ」と教えてくれました。「『遠くへ、更に遠くへ』という部分は解釈に少なくとも2通りあり、物理的な意味、そして少し抽象的、哲学的な意味もある」と彼女のフランス人の夫から追記がありました。

銀城氏が、旅をし、迷いながら街を歩き、そして出鱈目にシャッターを切った。ただただ共感を覚えました。旅をするのも、写真を撮る理由も人それぞれですが、少なくとも私の場合、旅をしたり写真を撮りたくなるのは、幸せな時よりもどちらかと言うとネガティブな気持ちの時です。しかしこの詩の直訳にあるように、いつも心のどこかに希望は抱いていないとやりきれない。そして、「写真は写ってしまう」という自分ではコントロールしきれないところが、私たちも銀城氏も写真に惹きつけられる理由なのだろうと思いました。(鶴巻育子)

 


 

▼写真展概要
銀城アトム写真展「遠行希」
会 期:2025年3月4日(火)~ 3月16日(日)
    12:00-18:00(日曜17:00まで)

会 場:Jam Photo Gallery(www.jamphotogallery.com
    〒153-0063 東京都目黒区目黒2-8-7鈴木ビル2階B号室
入場料:無料