佐方 晴登「三里塚-大きな物語の歴史III/小さな物語へ」

佐方 晴登
2025/12/09 ~ 2025/12/21
TOTEM POLE PHOTO GALLERY
2021年から「大きな物語の歴史」と題して、千葉県の新東京国際空港(現成田国際空港)建設反対運動である「三里塚闘争」をテーマに作品を制作し、継続的に発表してきた。当初は、「1968年」的パラダイムに関心があり、所謂“大きな物語”(リオタール)を作品を通して再検証するというのが作品のコンセプトであった。しかし、闘争について調べ、関係者の方に話を伺う度に、この社会運動の中で一番取り上げるべきなのは、(農民を中心とした)人間の「生」の思想なのではないかと考えるようになった。イデオロギーは大切ではあるが、個々人の抵抗や行動の物語を排除してはならない。(決して当時の暴力主義を肯定する事はできないが。)今回の展覧会では、そういった“小さな物語”を掬い上げるべく、当時の文献から得た情報をキャプションとして写真と共に展示する。しかし、風景を「ここで闘争が起き、人が死んだ」などと、不穏な情報のみを指し示す対象にするのは危険である。闘争以外の人の営みが代々続いてきたからこそ、生活保守の為の運動が盛り上がったのだ。そういったジレンマを認識しつつ、文章を交えての写真展を開催したいと思う。
三里塚闘争とは
1966年、国が一方的に千葉県の三里塚/芝山地域に巨大な国際空港を建設すると発表した。当然、地域住民は大反発し、直後に三里塚芝山連合空港反対同盟が結成。当初は当時の革新政党の支援で運動が行われていたが、途中から学生運動の流れを汲む新左翼活動家が流入し、反対運動が過激化した。反対同盟と国・警察双方が実力行使による衝突を繰り返し、双方に死傷者が多発する事態となる。1978年に空港が開港した後、反対同盟が二派(後に三派)に分裂する。90年代に国・空港公団と反対同盟熱田派が対話のテーブルにつき、二期工事では多数の農民が運動から離脱した。現在でも二つの反対同盟が存続し、闘争を継続している。
また現在、C滑走路建設、B滑走路延伸工事等により、空港の面積が約二倍に広がる広大な開発が進行中である。かつて激しい闘争が起きた地域が移転対象地区に指定されているが、目立った反発も少なく、いまのところ大規模な反対運動には至っていない。
この写真展に並行し、三里塚闘争についての歴史資料館「成田空港 空と大地の歴史館」の企画展示「三里塚と一鍬田 過去と現在」にて、作品「大きな物語の歴史」を展示しています。(12月21日まで延長中)ぜひこちらも合わせてご覧ください。
佐方 晴登「三里塚-大きな物語の歴史III/小さな物語へ」
会期:2025年12月9日(火)~12月21日(日)
12:00 – 19:00/月曜休廊
会場:TOTEM POLE PHOTO GALLERY(https://tppg.jp)
東京都新宿区四谷四丁目22 第二富士川ビル1F







